My important place【D.Gray-man】
第19章 灯火
「ハムスター癖はちったぁ直ったみたいだな。よしよし」
「はむすたー?」
「おーよ。入団したての頃は、こうして触ろうとすればビクついて中々触らせてくれなくてよ」
問い掛けるモヤシに、ジジが面白おかしそうに笑って語る。
「ジジさん、それ昔の話…っ」
「でも事実だろ。食事ん時は急いで頬いっぱい飯詰め込んで食うしなー。誰も取りゃしねぇってのに」
抗議する月城は困り顔だったが、俺の足は止まったままジジの話に耳を傾けた。
モヤシみたいに飯に執着する奴だったのか、あいつ…そういや蓮華の茎まで食う奴だった。
余程腹でも空かせてたのか。じゃなきゃ花を観賞より食用に選ぶなんざ早々しない。
少なくともそんな女は、月城が初めてだった。
「ハムスターみたいだろ?」
「へぇ、知らなかったなぁ」
「なんだか可愛いわね」
ジジにつられて笑うジョニーや貧血女に、その場の雰囲気が和む。
決して悪くはない、そんな空気の中。
「そう、かな」
話の中心人物だけは、ぎこちなく苦笑していた。
ついさっき、唇を噛んで言葉を呑み込んだ時と同じものだ。
俺の中でその表情が引っ掛かる。
「いつまでも無駄話してんじゃねぇよ。さっさと報告に行くぞ」
そんな月城をいつまでもこの場に置いておきたくなくて、急かすように声をかけた。
「でもイノセンスを先に」
「イノセンスなら僕がヘブラスカに届けておきますよ」
「私も一緒に行っていいかしら、アレンくん。まだ届けたことなくて」
「勿論、いいですよ」