My important place【D.Gray-man】
第19章 灯火
「「おかえりーっ」」
方舟ゲートを通ってすぐ、教団で待っていたのは科学班の二人。
一人は教団本部配属のジョニー・ギル。
もう一人は──
「あ。確かアジア支部の…?」
「お、嬉し。俺の顔、憶えててくれた?」
不思議そうに問うモヤシに、眼鏡の奥の目が笑う。
「ジジ・ルゥジュンだ。本日付けで本部勤務になった」
長いドレッドヘアーに二ット帽子。丸眼鏡に無精髭。
個性的な見た目のそいつは俺も見覚えのある、科学班の人間だった。
「これは蝋花から君へってよ。俺の可愛い後輩泣かすなよぉ、アレン・ウォーカー」
「わ、みたらしだ!」
抱えた大荷物をモヤシに渡しながら、眼鏡顔が俺に向く。
「おっ、久しぶりじゃねぇの神田! 新しい六幻どー? 刀工のズゥ爺(じ)っさま気にしてたぜ」
「…まだ生きてんのか、あの爺さん」
「文句ねぇなら、良好って伝えとくぞー」
「好きにしろ」
適当に相槌を返しながらジジの横を通り過ぎる。
「え、あの神田くんが…」
「ちょっと心開いてる…?」
後ろから聞こえたモヤシ達の声に、反射的に眉間に皺が寄った。
いちいち反応すんな、うざったい。
「あージジはね、2年くらい前まで本部にいたんだ。上と喧嘩して飛ばされたの」
「神田のこーんな、ちっせー頃とか知ってるぞー」
「…オイ」
聞き捨てならない笑い声に振り返れば、案の定ジョニーの言葉に、手を腹の下に当てて笑うジジがいた。
そこまでチビじゃねぇよ。
「お、どした雪。怪我したのか?」
「お久し振りです、ジジさん。掠り傷ですけどね、少しだけ」
ジジの目が、最後に方舟ゲートを通ってきた月城を捉える。
「お前も大きくなったなー。昔はこーんなチビだったのによー」
「そ、そこまで小さかった覚えないですけど…っ」
わしわしと頭を無造作に撫でられて、月城がぎこちなく応える。
昔っからジジはこうだった。
どんなにガンを飛ばしても拳を出しても、遠慮なくスキンシップを取りにくる。
いちいち反応しているのが馬鹿らしくなるくらいに…というか、月城の子供の頃を知ってんのか。