My important place【D.Gray-man】
第19章 灯火.
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「うん、無事イノセンスも確保できたし。万事解決かな」
「ありがとうございます」
全ての報告を終えた月城が頭を下げる。
「怪我も酷くなさそうだし、安心したよ」
コムイのその言葉に、取り繕うように月城は笑っただけだった。
任務の報告の際、その怪我もこいつは口にした。
簡潔に、AKUMAとの戦闘時に負傷したと。
というかイノセンスを第一に優先させんのはいいが、自分の体を簡単に張ってんじゃねぇよ。
レベル3のAKUMA三体に、人間一人で相手なんて分が悪過ぎる。
報告の途中についそう口を挟みそうになって、なんとか押し黙った。
「でも体は休めないとね。報告書は後日で大丈夫だから、休みつつ仕上げてくれたらいいよ」
「すみません、助かります」
もう一度頭を下げて、司令室を出る月城の後に続く。
去り際に見えたコムイは、相変わらずニマニマといけ好かない笑みを浮かべていた。
「──じゃあ私、アレンにコート返しに行くから」
「オイ待て」
司令室を出た途端、当たり前に去ろうとするそいつを止める。
「消毒つったろ」
「……コート返しに行かないと」
「んなもんいつでも返せんだろ、シカトすんな」
それでも去ろうとする月城の腕を掴む。
聞こえてねぇフリすんなコラ。
「ほ、本気だったのそれ…! だから大丈夫だってっ」
「お前の大丈夫は信用ならねぇんだよ」
腕を掴んだまま歩き出せば、本気で抵抗してくるそいつに眉を寄せる。
そんなに嫌なのか。
「本当に今回は大丈夫だからッ頭にあんな大量の消毒液かけられたら余計痛むだけだから…!」
「手加減してやるよ、多少は」
「多少!?」
抵抗し続ける月城の体を、ずるずると引き摺りながら廊下を進む。
あまりに騒ぐから廊下を歩く他の団員達の視線をちらほらと受けて、居心地悪そうに月城は声を抑えた。
「神田のその言葉の方が、信用できないんだけど…」
んだとコラ。
「そんなに痛くされてぇのか」
「っ! 嘘ですごめんなさいッ」
振り返って見えた月城の顔は、俺を見て一気に青褪めた。
んな顔したって止めねぇからな。