My important place【D.Gray-man】
第19章 灯火
「どうでもいい」
腹の底に溜まった黒いものを吐き捨てるように、監査野郎に背を向ける。
誰の目にも重く変わる空気に、モヤシの睨み付けるような視線が届いた。
『でもアレンは頑張り屋だから。あんまり無理し過ぎないようにね』
月城のその言葉に対して、見せたモヤシの一瞬の情けない顔は、恐らく素に近いものだった。
14番目のノアメモリーや、クロス・マリアンの死。
今回の任務で時折見せていたモヤシの虚ろな表情は、恐らくそういう色んな感情を押し込めたものだ。
ただ、そんなもん見ても別に何も感じない。
俺にとってはどうでもいい。
そもそも任務中に余計な私情挟むんじゃねぇよ。
それが伝わったのか。睨み返す俺の視線に、モヤシの表情も尚更硬くなる。
「何もそこまで言わなくても…っアレン、リンクさん、気にしないで」
「…わかってます。いつものことです」
「…ええ」
取り繕うように間に入ったのは月城だった。
それでもその場の空気が変わる訳でもない。
ただ頷くモヤシは、月城へと向くと険しい顔をすぐに変えた。
取り繕うような笑顔じゃない。眉尻を下げ、心配そうに月城の額を覆う包帯を見ている。
「オイ。暗証番号だ」
「は、はい」
そんなモヤシの顔も、教団の匂いがこびり付く空気も胸糞悪くて、さっさと司祭に暗証番号を示すと教会へと踏み込んだ。
俺が憎いのは教団。
その教団を崇める者も、その為に命を張る者も、全部俺にはどうでもいいことだ。
そんな奴らと馴れ合う気はない。
「っ…神田」
ただ一人を除いて。
「なんだよ」
振り返れば、ぎこちなく追いかけてくる月城が見える。
教会に入れたってことは、今度は番号を間違えなかったか。