My important place【D.Gray-man】
第19章 灯火
「方舟は28番ゲートが開くとのことです。オレ達は事後処理があるので、ここで失礼しますね」
「それなら私も…」
「いえ、雪先輩は皆と一緒に本部に戻って下さい」
「怪我してますし、体を休めないと」
手配した馬車には乗り込まず、己の仕事を告げるファインダー二人に月城が続こうとする。
その前に、あっさりと二人に首を横に振られた。
「このくらい大した怪我じゃないよ。私もファインダーの端くれだし、ちゃんと仕事しないと」
「それなら室長への任務報告、お願いできますか?」
「雪先輩ならオレらより的確に報告事項、挙(あ)げられると思うんで」
「でも…」
「いーから、いーから。オレ達だけでも充分仕事できますから」
「任せて下さいって」
渋ったものの、そいつらに笑顔で背中を押されて結局、月城は馬車に乗り込んだ。
「ごめんね。事後処理、気を付けて」
「了解っス」
「そちらも、後はお願いします」
心配そうにファインダー二人を見る月城に構わず、馬車は走り出す。
「さっさと座れ」
そうやって他人の身を案じる暇があるなら、自分の心配でもしろ。
そう頭に浮かんだ思いを口にする代わりに、揺れる馬車の中一人立ち続ける月城を席に促す。
マーチン宅を借りたのはAKUMAの血を洗い流すのと、頭の応急処置の為だけだ。
任務後休めていないお前の体じゃ、転倒でもしたらまた怪我するだろうが。
振り返った月城の顔は未だ不安そうに、それでも抗うことなく席の隅に腰を下ろした。