My important place【D.Gray-man】
第19章 灯火.
「もうやめようよ、喧嘩…頭なら平気だから」
そんな俺達に、脱力気味に月城が間で宥めてくる。
だが今の俺の目には、このクソモヤシしか入っていない。
いちいち月城のことに関して突っ込んでくるこいつは、不快の塊そのものだった。
いつも以上に、こいつを見てると苛々する。
「はい、確認取れました」
「やったわ! ちゃんと暗証番号覚えて──…って、また喧嘩してるのっ? 二人共」
「はぁ…貴方方、同じパターンで喧嘩するの今日で何回目ですか」
ムカつく澄まし顔で言ってくるのは、今まで黙って傍観していた監査野郎。
止める気もないのに、小言だけは一人前に言ってくる。
「全く…貴方方は仮にも教皇の威信の象徴である、ローズクロスを掲げた存在なのですから」
くどくどと煩く口にするのは、教団のお偉い方々のこと。
虫唾が走る。
「それに見合う品位というものを、少しは持って──」
「煩ぇよ」
「…はい?」
「煩ぇんだよ、お前ら」
どんなに偉かろうがなんだろうが、俺の知ったことじゃない。
教団に身を置いていても、俺の心は此処にはない。
教団の為だなんだ、そんな思考で動くつもりも一切ない。
俺が此処にいる意味は一つだけ。
"あの人"に会う為だ。
名前も何も知らない。
この頭に残る記憶が覚えているのは、その朧気な声と顔だけ。
それでもあの人に会いたいと思う気持ちは何よりも強く、捨て去れなかった。
アルマという唯一無二だった存在を切り捨ててでも、俺が選んだ道。
だからこそ止まる訳にはいかない。
「俺の知ったことじゃねぇんだよ」
あの人に会うまで、俺は死ねない。
その気持ちだけでこの教団で生きてきた。
残されたあの人の記憶は、今のこの体のものじゃない。
それでもこの記憶の俺も確かに、今の俺と同じエクソシストだった。
もしもあの人の手掛かりを見つけられるなら、それは此処にしかない。
だから俺は、この教団にいる。