My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に
「雪さんっ!?」
「余所見すんじゃねぇよォ!」
アレンが呼ぶ声に被さったのはAKUMAの罵声。
目の前ではきっとAKUMAと二人の戦闘が行われているんだろう。
でも顔を上げて、それを確認することすらできない。
「ッは、…!」
痛みで。眩暈で。
どろりと垂れた赤が視界を覆う。
それはさっき被ったはずのAKUMAの血じゃない。
私の額から溢れ出た、赤い色。
脳に杭を打ち込まれるような鋭い痛みは額中に。
溢れて垂れる血は、視界を覆う程に多い。
…まさか。
額を震える手で擦る。
指先が真新しい傷を掠めて、ズキリと痛みが増した。
まさか。
「ぐギャ…!」
「月城!」
誰かが呼んでいる。
AKUMAの悲鳴と同時に、巨体が倒れる地響きが鳴る。
「お前…ッ!」
傍に駆け寄る気配は、痛みの中でも察することができた。
構えて歯を食い縛る。
駄目だ。
「どうしたッAKUMAの血に中(あ)てられたか…ッ」
膝をついて地面に顔を伏せた状態のままでいれば、ぐっと強く肩を掴んでくる。
見なくてもわかる。神田の気配だ。
「ッぁ…だ、いじょうぶ…ッ」
額を伝う血は止まる気配はなかったけど、頭の痛みは最初の衝撃に比べて、堪えられない程じゃなくなっていた。
額を押さえたままなんとか言葉を繋げる。
駄目だ。
こんな姿。
見られたら。
バレてしまう。
「…っ…?」
バレるって何が?
自分の中に浮かんだ思考に、自身で疑問を抱く。
『周りにバレないようにってこと』
誰かが、そんなことを言っていたような気がする。
誰だったのか。
わからない。