My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に.
千年伯爵の方舟を操れたアレンは、もしかしたらノアの手先じゃないかと噂されたりもした。
そんな疑心暗鬼を抱えた周りの空気に耐えて、仕方ないと笑っていたアレン。
…笑いたくもないのに、笑う顔。
そんな顔になるのも仕方ないと思う。
誰もそんなアレンを、責めたりなんかできない。
「……」
どうしよう。
教団側の身とするなら、このことはコムイ室長に報告しなきゃいけない。
…でも報告したその後は?
私はどうなるんだろう。
調べられるくらいならまだいい。
あちこち体を弄られるくらい、過去に経験済み。
でも、それだけじゃ済まなかったら?
エクソシストとノアは対極にある存在。
故に教団にとってノアは敵。
もし調べて私がノアだと確定してしまったら、教団の為にファインダーとして働いていたからといって、優遇されるはずもない。
最悪、待っているのは"死"。
そう思うと体が竦んだ。
…死にたいだなんて思ったことはないけど、強く生に固執したこともない。
ファインダーの道を選んだ時点で、いつか戦場で死ぬ運命もあると受け入れた。
AKUMAのウイルスが入った銃弾を受けた時も、ああこれで死ぬんだと、漠然とそんなことを感じたりもした。
でも今は、死ぬのが怖い。
「…っ…」
だって、死んだら
もう神田の傍にいられない。
「…なんで…今更…」
誰かの為に、何かの為に。
そんなこと思ってこの教団で生きたことはなかったのに。
それを望んだ途端、こんなことになるなんて。
本当に笑えない。
「……」
どうしよう。
どうしたら。
どんなに考えても、答えなんて出なかった。
──コンコン、
「──!」
お風呂場の外から聞こえたノック音に、心臓が跳ねる。
『雪ちゃん、大丈夫? 何かあれば言ってね、手伝うから…』
ドアの向こうから心配そうに声をかけてくれるミランダさんに、我に返る。
しまった。どうやら鏡の前で、ずっと考え込んでしまっていたらしい。