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My important place【D.Gray-man】

第18章 ロザリオを胸に



「雪さんは下がってて」

「うん」


 AKUMAの体に突き刺さったままの退魔の剣を抜いて、アレンが構える。
 残り二体のAKUMAに、対峙するアレンと神田も二人。
 これならきっと大丈夫だろう。
 安心は確信に変わって、後方に下がりながら僅かに息をついた。

 その時、額にズキリと痛みが走った。


「った…」


 こんな時に、と思わず顔を顰めて額を押さえる。
 いつもの鈍い頭痛だ。

 そう思っていたのに。




 襲ったのは、全く違う感覚だった。




「…ぁ…?」


 沸騰するような、蒸発したような。しゅう、と機体を上げるような音がする。
 違和感は体にあった。

 額を押さえたまま、何かと見下ろす。
 見えたのは先程、退魔の剣が貫通していた自分の胸元。
 そこに浮かぶ奇妙な跡だった。

 まるで上から焼き印でも押し付けたかのように、十字架のような跡がファインダーのマントを焼いている。
 そんな、奇妙な跡。


「…え?」


 何、これ。


「ッぁぐ…っ…!?」


 ズグ、と体内から何かが競り上がるような感覚。
 連動するように頭に痛みが走る。
 たちまちその鋭い痛みは額全体を襲った。


「うっァ…ッ…」


 思わずその場に膝をつく。


「…雪さん?」


 怪訝なアレンの声に応える余裕もない。
 両膝をついて身を屈ませたまま、鋭い額の痛みは思考を塗り潰した。




 ──ユ…スナ…




 まただ。
 ガンガンと響く頭の痛みの中で、誰かの声がする。




 ──ヤ…ヲ…




 "奴を許すな"。
 そう口にする。

 奴って誰。
 この声は誰。

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