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My important place【D.Gray-man】

第18章 ロザリオを胸に.



「月城」


 呼ぶ声。
 応える間もなく、伸びた手が私の腕を掴んだ。
 見えたのは、腕を掴んだままじっとこっちを見てくる顔。
眉間に皺を寄せた、怖い顔。

 ずっと見ていられなくて、思わず視線を逸らす。


「…血を飲み込んではねぇんだろうな」


 挙動不審に見えても可笑しくない私を、神田は怒らなかった。


「っ、うん…」


 小さく頷いて返す。
 返答はなかった。

 様子を伺うように、じっと見てくる神田の目。
 腕を掴まれたまま、空いた手が私の顔に伸びる。


「っ」


 思わずビクリと体が跳ねた。

 大丈夫。
 体中AKUMAの血塗れ状態だから、額の流血は誤魔化せてるはず。


「……」


 ビクついた反応をしてしまったからか。
 一瞬、顔の手前で止まる手。
 だけどそれは一瞬で、そっと指先が私の口元に触れた。


「か、んだ…?」


 血を拭き取るような動作で、触れた指先が口元を拭う。
 痛くはない、丁寧な手付き。
 思わず見上げたその顔は、まだ僅かに眉間に皺を寄せていたけど。


「じっとしてろ」


 その口から零れる声に棘はない。
 …心配、してくれてるのかな。

 勘繰るような気配はどこにもない。
 そんな神田の姿に、先程感じた怖さはもう消えていた。


「カーラさんが浴室を貸してくれるそうです、行きましょうっ」

「…ああ」


 後方から呼びかけるアレンに、その手が口元から離れる。
 だけど私の腕を掴んだ手は、放されることはなかった。


「行くぞ」

「ぁ、うん…っ」


 そのまま歩き出す神田に、慌てて後をついて歩く。
 片手でフードが脱げないように掴みながら、目の前の高い背中を見上げる。


「…っ…」


 ズキズキとした額の痛みは、まだ僅かに残っていた。











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