My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に.
「ッぁ…だ、いじょうぶ…ッ」
額を伝う血は止まる気配はなかったけど、頭の痛みは堪えられない程じゃなくなっていた。
額を押さえたまま、なんとかそう漏らす。
駄目だ。
こんな姿、見られたら。
バレてしまう。
「…っ…?」
バレるって、何が?
自分の中に浮かんだ思考に、自分で疑問を抱く。
『周りにバレないようにってこと』
誰かが、そんなことを言っていたような気がする。
それは誰だったのか。
わからない。
「大丈夫じゃねぇだろッこっち向け!」
ぐいっと、強く両肩を掴んで持ち上げられる。
強い力に簡単に顔は上がって、見えたのは真っ直ぐに見てくる神田の顔。
真っ黒なその鋭い眼は、何もかも見透かしてしまいそうで。
私の中の異変全てを、見破られてしまいそうで。
──怖くなった。
「っ…!」
額を押さえたまま、反射的に肩の手を振り払う。
真っ黒なその目が、驚きで見開いた。
「だ…大丈夫ッ、ちょっと、AKUMAの血で立ち眩み…しただけだから…ッ」
必死に言葉を紡ぐ。
脱げていたフードを深く被って、額を隠した。
大丈夫。
見えてないはず。
きっとバレてない。
「お前──」
「雪さん…!」
小さな声で神田が呼ぶ。
それを掻き消したのは、AKUMAを仕留め終えて駆けてくるアレンだった。
「どうしました、やっぱりAKUMAの血を…ッ?」
「う、ん。大丈夫。すぐ洗えば、」
とにかく今の姿を見られたくなくて、俯き加減に返す。
大丈夫。
大丈夫。
そう心の中で自分に言い聞かせる。
「急いでその血を洗い流さないと。ミランダさん、イノセンスは…っ」
「え、ええ…ッハワードさんが確保してくれたわっ」
ズキズキと頭はまだ痛む。
ただあの声は、いつの間にか止んでいた。
慌ただしくミランダさん達の元へ駆けるアレンの姿を見送りながら、ぎゅっと拳を胸の前で握る。
大丈夫。
大丈夫だから。