My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「算段…算段、のう。確かに、雪を内部からこちら側へ引き寄せるのは難しい。やはり神田ユウという存在が邪魔だ」
「だからって今すぐには消せねぇし。あいつを餌にして雪を釣るのもパス」
「じゃからロードがあれこれ外堀を埋めておるのだろう?」
「…なんだ、知ってんの?」
「知っておるのはワタシくらいだろうのう。ロードも無闇に周りに言いふらしてはおらん。それだけ慎重になっているということだ」
雪を奪い返す為に、ロードが散りばめた駒は一つだけではない。
ワイズリーが幾度となく雪の心を搔き乱し、そしてこちら側へと赴く様に擦り込ませているのも、所詮は駒の一つに過ぎない。
ワイズリーだけではない。
ティキも。そして他のノアもまた。
然るべき時の為に、ゆっくりとだが時計を進めている。
「主に課せられた役目はどうだ? 頃合いか?」
「……それも知ってんの?」
「ロード以外で言うならば、ワタシだけだ。安心せい」
「…まぁ、ぼちぼち。そろそろ溜まる」
「やけに時間がかかっておるのう」
「時間をかけてんの。機会は一度きりだろうしな」
「ふむ。では後は、あ奴の距離と…そうだ、千年公の様子も見ておかねば」
「それなんだけどさ」
「む?」
「思い付いたんだよね。何があっても千年公が言うことを聞いてくれることが、一つあったなって」
「ほう。あの千年公がか?」
教団への憎しみと新たな家族への期待を持っていても、ティキ達を危険に曝せないと足踏みしてきた千年伯爵。
彼を納得させるだけの案があるのかと、ワイズリーは三白眼を丸くした。
「…成程のう。確かに、我らを思う千年公だからこそ、じゃな」
ティキの思考を読み取り、ふぅむ、と己の顎に手をかけながら、ワイズリーは一つ頷いた。
「思えば御主がそういうものを千年公に頼んだことも、一度もなかったか」
「俺、欲しいものは自分で獲りに行く主義なんで」
夜が明けて、どれ程時間を有しただろうか。
白く世界を覆っていた霧が、徐々に薄れ始めた。
「でも今回だけは、絶対に欲しいんだよね。譲りたくない」
ベンチに座ったまま、空を仰ぐ。
その顔に差し込む淡い光に、ティキは目を細めた。