My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
ちゅぷりと、粘膜を繋ぐ音を立てて唇が離れる。
「…初めて見た。雪のその顔」
とろりと蕩けた瞳。
高揚した頬。
濡れて艶を増す唇。
リヴァプールでは、舞踏会仕様の仮面が邪魔をして見ることはできなかった。
その快楽に沈みゆく顔に、ティキが深く満足そうに笑う。
「み…見ない、で」
「なんで? 俺しか知らない雪が欲しいって言っただろ。もっと見せて」
「そんな、の…んぅッ」
息つく暇もなく、再び唇を塞がれる。
今度は呼吸の余裕を持って、丹念に雪を味わうように。
「ん、ふ…うっ?」
戸惑いながらも受け止めていた雪の体が、びくりと震えた。
大きな掌が、腹部を這う。
ゆっくり一つ一つ、体の形を確かめるかのように。
腹を、脇を、胸の間へと這いゆく指の腹に、思わず身を捩った。
「んんっティ、キ」
「ん。雪の体、どこも柔いね」
「駄目、だって…ぁっ」
「なんで駄目? 気持ち悪い? 俺が触ると」
「そんなこと、ない、けど…」
「じゃあ、気持ちいい?」
「わ、わかんな…」
「これは?」
「ッ」
ふにりと、包み込むように片胸に触れられる。
服越しでも確かな感触に、思わず雪が固まる。
「気持ち悪い? 触られたくない?」
唇が触れ合いそうな距離で、けれど決して触れることなく問いかけた。
「嫌だって思う?」
そこに嫌悪を感じていれば、そもそも触れ合いなどできていない。
それをわかっていて、尚も優しく問いかけた。
「俺のこと、嫌に感じる?」
蕩けていた暗い瞳が揺れる。
艶やかな唇を開いて、雪は熱い吐息をついた。
「…嫌じゃ、ない」
わかっていた答えだ。
なのに己の体の芯から、熱が灯っていくような感覚だった。
リヴァプールで、快楽に溺れた雪を前にした時と同じだ。
繋がることを求めてきた雪を雪と知らずとも、己の手に堕ちた瞬間は高揚した。
なんとも哀れで弱い人間の、欲望だと。