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My important place【D.Gray-man】

第49章 つむぎ星に願いを



「おーい。起きてる?」



 ひらひらと目の前で振られる手に、更に瞼が押し開く。

 優しいような、気怠いような。
 呆れたような、待ち侘びたような。
 そんな声に、呼ばれた。



「呼んだのは雪だろ。そろそろ起きてくんねぇ?」

「…?」



 焦点を合わせていけば、ぼんやりとしか見えなかった人影が詳細を表す。

 癖の強い黒髪。
 切れ長の目の下にある、泣き黒子。
 形の整った鼻筋に、薄い唇には咥え煙草。



「…ティ…キ…?」

「ご名答」



 ぼんやりとその名を呼べば、目を見張る美形が呆れ気味に溜息をついた。



「本当、厄介事に巻き込まれんの多いね」

「っティキ!?」

「あっぶな。ご名答って言ったけど」



 煙草を手に取り、煙か、溜息か。吐息をつくティキに、がばりと雪の体が勢いよく起き上がる。
 ひょいと顔を逸らして顔面衝突を回避しながら、ぐしりと髪を粗く解いてティキは腰を上げた。

 白いシャツに色の褪せたジーンズ。
 シンプルな出で立ちだと言うのに、モデルのように様に見えるのは顔面偏差値故か。
 何処からどう見ても、雪の知るティキ・ミックの姿だ。



「なんで此処に…っ」

「呼んだのは雪だって言っただろ。自覚ねぇの?」

「…ぁ」



 はたと言葉を止めた雪にも自覚はあった。
 以前、ワイズリーと対面した時にそれとなく聞いたのだ。
 ティキは一緒ではないのかと。



「……」

「? 何その顔」

「……怒って、る?」

「は? なんで」



 顔色を伺うように、見上げてくる雪はどことなく不安そうだ。
 突拍子もない問いかけに、ぱちりとティキの切れ目が瞬いた。



「ワイズリーが、ティキは虫の居所が悪いって言ってたから。その…無理矢理来させたなら、ごめん」

「あー……成程ね(あの魔眼、余計なことを)」



 後一歩のところで、雪を教団の手から奪い返し損ねた。
 あのリバプールの一件はティキの心を荒らし、暫くは落ち着かせなかった。
 そのことをワイズリーは雪に話したのだろう。

 果たしてどこまで雪に話したのか。ワイズリーは何も語らなかった為に、ティキも詳細は把握していない。

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