My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に
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ふ、と顔に影がかかる。
見上げる間もなく、咄嗟に足の軸を回して反対へと飛び退いた。
途端に、目の前で杭を打ち込むようにドゴンと地面にめり込んだのはAKUMAの拳。
「このアマ…! ちょこまか逃げやがって!!」
「クソっ! 逃げ足だけはいっちょ前だな!」
苛立たしげに声を荒げるAKUMA達から、どうにかこうにか紙一重で攻撃を避けながら逃げ続けていた。
一体どれくらい時間は経ったのか、ほんの数十秒のような気もするし、数十分のような気もする。
命の危機を感じながら体感する時間は当てにならない。
「だから言ったでしょ、捕まえられないって…!」
それでもAKUMA達を煽ることは忘れない。
その攻撃がミランダさんに向かないようにだけはし続けないと。
そんなぎりぎりの瀬戸際で私を助けてくれたのは、神田との幾度となる任務での経験だった。
任務に対してストイックで、時に冷徹だった神田はぐずぐずしてたらすぐに置いていく。
だからいつも必死にその背中を追いかけていた。
AKUMA討伐も多く、常に危険と隣り合わせ。
そんな神田との任務はいつもスパルタで、気付けば体は鍛えられていたんだろう。
どうにかこうしてAKUMAから逃げ回れているのは、そのおかげだ。感謝しないと。
「このままじゃ雪ちゃんが…!」
「なんだいありゃあ…ッあれがアクマってやつなのかいっ!?」
「リンク監査官! チェスの勝敗はッ!?」
「待って下さい。今良いところなんです」
「こっちは危機的状況なんですって!」
時間停止(タイムアウト)の中が一層騒がしくなる。
皆の無事には安心するけど、私の体力もいつまで保つか。
このままじゃこっちも時間の問題かもしれない。
「アレン早く…っ」
思わず懇願する。
アレンの左眼なら、この騒動にもいずれ気付いてくれるはず。
あっちでAKUMAとの戦闘に時間が掛かっていれば別だけど。