My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「カンダ…また遊びに来てくれる?」
「…さぁな。元々此処は俺達の住む世界ング」
「ハイハイハイ! 幼気な少女に現実突き付けんなさ!」
それも束の間。
隣からにゅっと伸びてきたラビの手が神田の口を塞げば、ぎろりと殺気立った目が向く。
それでも離す訳にはいかないと、笑顔を貼り付けたままラビは首を横に振った。
自分達がマグルであり、尚且つ魔法界とは縁のない人物であることを知っているのは、この場ではフレッドとジョージだけなのだ。
「っあのね、カンダ!」
「あ?」
「ちょっ待てって…ッ」
神田の肩に触れる小さな手。
背伸びをしたジニーが、さらりと流れる黒髪の間から覗く耳に唇を寄せる。
ラビの制止も待たずに、小さな声は内緒話をするように打ち明けた。
『ユキのこと、大切にしてあげてね』
驚き沈黙する神田から一歩身を退いて、照れ臭そうに笑う。
「あたしだって女だもん。カンダが誰を見てるかくらい、わかるんだから」
一目惚れのようなあの寝起きの笑顔も。
湖から引き上げた際に見せた安堵の表情も。
神田の心に負以外の感情を灯すのは、いつも雪だった。
それくらい、少女の目にもわかる。
「…ああ。約束する」
いつもなら「言われなくても」と一蹴する返事は影を潜め、神田は素直に頷いてみせた。
「まっさか、本気でカンダを狙ってたとはね…我が妹ながら驚きだ」
「だからジニーには高嶺の花だって言っただろ?」
「うるさいなぁ」
両側から横槍を入れてくる双子の兄に煩わしそうにしながらも、ジニーは笑っていた。
雪の荷物を再び肩に担ぎながら背を向ける神田を、見送りながら。
「いいの。とびっきり良い女になって、いつかカンダ以上に素敵な人を見つけてみせるんだから」
数年後。
その言葉通り、魔法界の救世主とも言える男の子の心を彼女が攫うことを、まだ誰も知らない。