My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
ラビの目には、うろうろと不安げに湖の縁を歩き回っている小柄な天馬が見える。
小柄と言っても、乗馬も可能なハフリンガーポニー程で、人を乗せるには十分な大きさだ。
羽根はあるが飛べないらしく、何度も羽ばたかせてこちらへ来ようとしているが、失敗しては地に足を着いている。
やはり求めているのは親のセストラルだ。
切なげに何度も呼ぶように鳴いていた。
「それよりユウが潜ってから数分がもう経過してる。このままじゃ先に雪が溺れるさ…っお前らの魔法でどうにかできねぇのッ?」
「できたらとっくにしてるんだけどね!」
「カンダが何処に潜っているかもわからないようじゃ…っ」
神田が水中に飛び込む際に利用していたのは、魔法動物であるセストラルだ。
いくら知識量のあるラビでも、魔法界のこととなると足踏みをしてしまう。
何か打開策はないかと、魔法界の住人である彼らに助言を求めれば、同じく切羽詰まった声で返された。
危機感を持っているのは双子も同じなのだ。
杖を手に湖を覗くものの、濁った水中では何も情報を掴めない。
──ピシッ
小さな亀裂音が生じたのは、その時だ。
いち早く気付いたのはラビだった。
しかし勘付いたのは音ではなく、足場から感じる衝撃に。
「危ねぇッ」
「きゃあ!?」
「うわッ!」
「なんだ!?」
咄嗟にジニーを担ぎ上げて後ろへと飛び退く。
それと同時に、びしりと孤島の足場が割れた。
亀裂が入ったかと思えば、一気に割れた地面が吹き飛ぶ。
真下からの衝撃に、高い水飛沫と共に地面は抉れ、穴を開けた。
「まさか…ッ」
ラビの声に呼応するかのように、水飛沫の下から何かが光る。
ザン、と波を断ち切るような斬撃が響いて、青白い刃が天へと飛んだ。
真逆の滝のように空へと上っていた白い水飛沫が、二つに割れる。
「(あれは六幻の斬撃派! ってことは──)ユウ!」
「えっそこにカンダがいるの!?」
ぽっかりと開いた孤島の穴。
ジニーを担いだまま駆け寄るラビに、双子も足を向ける。
覗く穴の底は真っ暗闇。
人影らしきものは見えない。
それでも、幾度も任務で神田の技を見ていたラビは直感していた。