My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「──」
子供の無事を喜んで擦り寄せていた顔が、不意に上がる。
白い眼でセストラルがじっと見つめる先は、広い湖だった。
ぴしりと尾先で地面を叩くと、一点を見つめるようにじっと湖を見据え続けている。
「お兄ちゃん! 助けて!」
「こんな時だけお兄ちゃんか、現金な妹よ」
じたばたと暴れるジニーを木の枝から救出しながら、フレッドは大きなセストラルの背に跨る神田から目を離さなかった。
確かにセストラルは、乗り手の望む目的地を読み取り運ぶことができると聞いた。
しかしその目的地を、神田自身も知らないのだ。
そんな状態で辿り着くことができるのだろうか。
バサッ
フレッドの杞憂を吹き飛ばすかのように、徐にセストラルが羽を広げた。
見据えた先から鼻先をずらすことなく、二、三歩の助走で黒々とした体が優雅に飛び立つ。
「カンダ!」
「危ないッ近寄るな…!」
「ヒィインッ」
飛び立つ様は一瞬だった。
駆け寄ろうとするジニーの体を、フレッドが抱き止める。
同じく後追いをしようとするも、幼い羽では飛べないのか。仔セストラルは湖の淵に立ち切なげに鳴いた。
「全く…ッこれでユキを助けられなかったら流石に怒るからな、カンダ!」
その声は届いていたのかどうか。
黒いドラゴンのような羽を持つ天馬は、既に高い空へと駆け上がっていた。