My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「お前は離れてろ。いても邪魔だ」
「な、そんなこと…ひゃっ!? な、何するのっ!?」
「今度こそ見張ってろよ。ガキのお守り一つできねぇなら、不良品として科学班に突き出すぞ」
『ピィ…』
太い木の枝にジニーの服のサスペンダーを引っ掛ければ、小さな体は宙ぶらりんに浮いた。
ギロリと鋭い目で命令する神田に、ぷるぷると大きな瞳を滲ませて通信ゴーレムが頷く。
「待って! カンダ!」
「いいから黙って見てろ。みすみす自殺行為はしねぇよ」
そのまま足を向けたのは、湖ではない。
くるりと背を向けると、真反対へと進んだ。
その先にいたのは。
「背中借りんぞ」
「ブルッ…!?」
「ワオ。カンダ、それ自殺行為だから」
縄も持たずに神田がひらりと飛び乗ったのは、仔の心配ばかりしていた親のセストラルだった。
突然のことに驚くセストラルの体が跳ね上がる。
当然と言えば当然の反応だ。
「おい! 子供の体を縛ってる魔法を解け!」
「は!? 何を急に!」
「いいから言う通りにしろ!」
「ったく…無茶は僕の専売特許だって言うのに! 流石大将、恐れ入るよ!」
言われるがまま、フレッドが杖を振る。
すると倒れたまま尾を揺らすことさえできなかった仔セストラルが、ばたばたと暴れ出した。
何度か足をばたつかせた後、どうにか自力で起き上がる。
その姿に一番驚きを見せたのは、暴れ馬と化していたセストラルだった。
ロデオのように激しく後ろ足で跳ね上がり、神田を振り落とそうとしていた行為が静まる。
うろうろと仔セストラルの周りを立ち回ると、鼻先を押し付け安堵したように低く鳴いた。
「お前の一番大事なもんは、守ってやった。これで正当な関係だな」
骨と皮しかない硬い首筋に手を当てて、神田が呼びかける。
「次は俺の大事なもんを守ってもらう。協力しろ」
相手の言葉は理解できないが、こちらの言葉は理解できているとわかった。
例え人語の詳細がわからないとしても、もし本当にこの魔法生物がフレッドの言う能力を有するのなら。
(読み取れるんだろ)
乗り手が今一番に向かいたい場所を、彼らは知っているはずだ。