My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「カンダ! フレッド!」
落ち着きを取り戻した二人に、無事だと感じたのか。
茂みから抜け出したジニーが駆けてくる。
後ろを慌てて追う通信ゴーレムが、赤毛の少女を止めようとするもののまるで役目をこなしていない。
なんの為の見張り番かと溜息をつきつつ、神田は六幻を鞘へと戻した。
相手は獰猛な獣だが、いざとなれば力で押さえ込むことができるとわかった。
刃を使うまでもないだろう。
「出てくるなつっただろうが」
「でも…ッ二人が、心配だったから…」
「二人って言いながら、その目はカンダしか見てないようだけど?」
フレッドの突っ込みも、ジニーの耳には右から左。
ほっと安堵の息をついて、神田の手を握った。
「やっぱりカンダは凄いわねっセストラルを捕まえちゃうなんて」
「捕まえてねぇよ。馴らしただけだ」
「馴らしと言うより服従だな、アレは」
「従わせてんなら大差ねぇだろ」
「何を言うんだい、大違いだよ。人に仕えるように訓練すれば、凄く心強い天馬なんだから。ファイアボルトより速い飛行速度に、乗り手の思考を読み取って確実に目的地に届ける能力まで有してるんだから」
「やけに物知りじゃねぇか。赤毛の癖に」
「今、全世界の赤毛に喧嘩売ったけど?」
ホグワーツでも恒例となっているスポーツ行事、クディッチの選手でもあるフレッド。
そのスポーツで欠かせない箒の知識なら人並み以上にある。
誰もが欲しがる、魔法界最速の箒ファイアボルト。
それすらもセストラルは凌ぐのだ。
「それより、忘れてくれるな諸君。半分は僕の成果だということを」
「ンなことより、この状態のまま放る訳にもいかねぇだろ。その杖で縄かなんか出せねぇのか。あの親も繋いでおく」
「ワオ、さらっと流されたぞ……言っておくけど、魔法の杖は便利な道具箱じゃないから。セストラルを繋げるとなると、頑丈な縄が必要になるだろうし」
「使えねぇな…じゃあ魔法の杖なんて名前付けるんじゃねぇよ」
「とうとう魔法界にも喧嘩売ったな。そういうことは一般市民の僕じゃなく政治家辺りのお偉いさんにでも言って欲しいものだね」
やれやれと肩を竦めて杖をしまうフレッドに、それ以上の期待は無駄だと悟る。
神田も辺りを見渡すと、これだけの騒動を起こしても何も感じない空気に諦めの溜息をついた。