My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
拘束呪文により身動きの取れていない仔セストラルの胴に跨ると、神田は刃を首へと添えた。
ぎらりと光る刃と同じく、ぎらりと殺気立った目を向けたのは荒ぶる親に対して。
「此処にいる人間を一人でも襲ってみろ。こいつの首を即座に斬る」
「グルルルッ!」
「煩ぇな。子供を殺されたくなかったら、大人しくしろつってんだ」
「凡そ想像はつくけど何してるか聞いてもいいかな!?」
「子供を人質に取っただけだ。…いや獣質か」
「えええ…」
頭が良い魔法動物と言っても、相手は野生のセストラル。
果たして細かな話が通じるのかと、フレッドは杖を向ける先も定まらずただただ顔を青くした。
肝心のセストラルと言えば、蛇のような長い尾をぴしりぴしりと地面に打ち、更に激しく威嚇している。
拘束呪文によりまともに動くこともできない仔セストラルは、弱々しく鳴くばかり。
「言うことを聞けば子供に傷は付けない」
「そんなこと言ってセストラルに通じる訳が…!」
貫くような神田の視線と、白内障のような白いセストラルの目線が重なり合う。
ぶるりと唐突に頭を振り被る。
苛立ち混じりに蹄を地面に何度か打ち付けると、セストラルは不意に頭を垂れた。
「…ブル…」
息はまだ荒いが、威嚇するように打ち付けていた尾を下げ、広げていた羽を畳み込んだ。
「よし」
「え?」
「話がわかればそれでいい」
「…通じたのまさか?」
先程の暴れ馬状態が嘘のように大人しくその場に立つセストラルに、神田も跨っていた仔の胴体から身を退く。
「俺達の身の安全が保障されるまで、そいつは縛り付けておく。だが殺しはしない」
「いやだから…セストラルとお話中のところ悪いけど、僕にもわかるよう説明して欲しいんだけど?」
「お前は許可出すまでその拘束魔法とやらを解除するなよ」
「わかっておりますとも。それで、状況は?」
再三尋ねるフレッドに、神田は今一度セストラル親子へと目を向けた。
生き倒れたまま動かない仔に、鼻先を向け寄り添う親は心配そうな仕草をしているものの、こちらへ敵意は向けてこない。
「ひとまず大丈夫だろ。魔法動物ってのは、下手な人間より頭が回るな」
「…その動物相手に脅しをかけた君の方が、凄いと思うけどね…僕は」