My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「お前にしちゃ慎重じゃねぇか」
「はっはー、今はそれを誉め言葉として受け取っておくよ」
「褒めてねぇ」
「歩み寄りって言葉を知らないのかい? カンダ」
淡々と言い合いを続ける神田とフレッドに、セストラルは特に興味を持ってはいないようだった。
襲ってくる気配がないとわかると、緊張が解けたのか。ジニーもほっとしながら神田の背中から姿を見せる。
ぶるりと、セストラルの息が鼻先から零れる。
白内障のような白い膜が覆われた目が、小さな赤毛を捉えた。
「! 待てッ」
「え? きゃあっ」
即座にその異変に気付いたのは神田だった。
威嚇でしか反応を示していなかったセストラルが、ジニーに頭を向けている。
細い腕を掴んで背後へ隠せば、ばさりと大きな翼を広げたではないか。
「な、何っ?」
「前言撤回だ。慎重だなんだ言ってる場合じゃねぇ」
「なんだ、何かあったのかっ?」
「あの馬はどうやら、人間が餌に見えるらしい」
「えっ!」
「お前は出てくるな。狙われてる」
「ええっ!?」
蒼褪めるジニーを背後に押し込んだまま、神田は今度こそ六幻を抜いた。
眩く光るような白刃に、今度はフレッドが慌てふためく。
「ま、待てカンダ! 危険生物でも、その武器で傷付けたら保護した時に後々厄介だ!」
「じゃあどうしろってんだ」
「ええっと──」
「!」
フレッドが慌てて杖を取り出す。
その前に、真っ黒な羽を広げた獣が踊りかかった。
「チッ!」
「ひゃわあ!?」
六幻で受けきれない速度ではなかった。
しかし先程のフレッドの注意が効いたのか、即座にジニーの脇を抱えて神田が後方に跳ぶ。
「あいつを止められる方法があるならなんとかしろ! じゃねぇと妹が食われるぞ!」
「って言っても見えない相手にどうやって!」
「方法はあるのか、ねぇのか!」
「あるにはあるけど!」
鋭い蹄を高く上げて、踏みつけに来る。
像のような巨体を持つセストラルでは、その一蹴りも致命傷になり兼ねない。
距離を取ろうと思えば取れる。
それでも神田は紙一重で躱し続けた。
逃げてしまえば、目の前の獣はフレッドに狙いを切り替えるかもしれない。
止められる方法があるとすれば、それを知っているのは現状フレッドだけだ。