My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に.
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ふっと顔に影がかかる。
「っ!」
見上げる間もなく、咄嗟に足の軸を回して反対へと飛び退いた。
ドゴッ!
途端、すぐ目の前で地面にめり込んだのは巨大なAKUMAの拳。
「このアマ…! ちょこまか逃げやがって!!」
「クソっ! 逃げ足だけはいっちょ前だな!」
苛立たしげに声を荒げるAKUMA達。
どうにかこうにか紙一重でAKUMA達の攻撃を避けながら、私は逃げ続けていた。
「だから言ったでしょ、捕まえられないって…!」
私を助けてくれたのは、神田との幾度となる任務での経験だった。
任務に対してストイックで、時に冷徹だった神田はグズグズしてたらすぐに置いていく。
だからいつも必死にその背中を追いかけていた。
AKUMA討伐も多く、常に危険と隣り合わせ。
そんな神田との任務はいつもスパルタで、気付けば体は鍛えられていた。
今どうにかAKUMAから逃げ回れているのはきっとそのお陰。
感謝しないと。
「このままじゃ雪ちゃんが…!」
「なんだいありゃあ…ッあれがアクマってやつなのかいっ!?」
「リンク監査官! チェスの勝敗はッ!?」
「待って下さい、今良いところなんです」
「こっちは危機的状況なんですって!」
"時間停止(タイムアウト)"の中から届く声。
皆の無事には安心するけど、私の体力もいつまで保つか。
このままじゃこっちも時間の問題かもしれない。
「アレン早く…っ」
思わず懇願する。
アレンの左眼なら、この騒動もいずれ気付いてくれるはず。
あっちでAKUMAとの戦闘に時間がかかっていれば別だけど。
「なら…ッコレでどうだ!!」
腕の血管が浮く程に筋肉を盛り上げてAKUMAが地面に拳を打ち込む。
地面に拳が深く埋まる程の衝撃は、ピシピシと地面に罅を入れて。
「わ…!?」
罅が私の足場まで追いつくと、一気に足場をグラつかせた。
唐突な揺れに体がバランスを失う。
「んの、これしき…っ!」
割れる地面の間に足場を見つけて、踏み付け地を蹴る。
平らな地面に抜け出そうと踏ん張った時。
──ボコッ
またあの音が足元で鳴った。