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My important place【D.Gray-man】

第49章 つむぎ星に願いを



 見た目は馬に似ていても、人を喰らう魔物だったとは。
 顔を青くするラビの視界に、水流のように湖の中心へと走りゆくケルピーが見えた。
 これ以上岸から離れられては、魔法も届かない。


「ユキ! 飛び降りろ! カナヅチじゃないなら!」

「カナヅチじゃないけど…! それができたらしてるって!」


 ジョージの言うことに従いたいが、雁字搦めに絡んだ海藻のような毛は雪を捕まえて離さない。


「こうなったらオレが追うさ!」


 此処は魔法界。
 故に外部のものとなるイノセンスはなるべく発動させないようにしていたが、そんなことも言っていられない。
 ラビは腰のホルダーから鉄槌を取り出すと、くるりと掌で反転させて巨大化させた。
 鉄槌であれば水面上でも追うことはできる。


「ラビ!? それは」

「説明は後さ! "伸"!」


 ラビの掛け声と共に、一気に湖の上を滑るように伸びる鉄槌の柄。
 イノセンスの見知らぬ気配を感じ取ったのか、ケルピーはぶるりと毛並みを震わせるとヒヒン!と声高に鳴いた。


「わ…!?」


 前足を振り上げ、水面を蹴り高らかに飛び上がる。
 宙で綺麗な弧を描いたかと思えば、頭から湖の中へとドボンと飛び込んだ。


「雪…ッ!!」

「んぐ…ッ」


 白い水飛沫の柱が上がり、忽ち水魔は水中へと沈み込む。
 ラビの呼び声を最後に、荒波に巻き込まれた雪は強く唇を結んだ。
 咄嗟に腕の中のニフラーを見れば、こぽりと小さな口から零れ出る空気。


(いけない…!)


 ニフラーが水中に適した魔法動物だとは聞いていない。
 このままでは溺れてしまう。
 そしてそれは、ニフラーだけにあらず。


「っ!」


 どうにか逃れようと腕や足を引いて藻掻いてみるものの、絡んだ毛はびくともしなかった。
 ぐんぐんと水の底へと勢いよく潜り続けるケルピーに、されるがまま。
 予想以上に湖は深く、急な水圧が体に負荷をかける。
 視界さえも儘ならないモスグリーンの世界の中で、雪は苦し気に顔を歪めた。

 このままでは。


(息、が)


 ごぽりと、気泡が舞う。











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