My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「危ないから一人で行くな…ってなんさその馬! え馬!?」
「ナイスリアクションをありがとう」
雪の傍に寄り添う魚馬を見た途端、二度見ならぬ三度見をするラビは100点満点のリアクションだ。
その反応を見るところ、ラビの知らない魔法動物なのだろう。
「それは…ケルピー…?」
しかし魔法界の住人であるジョージは違った。
息を呑むように突っ立ったまま、ぽつりと魚馬の正式名を口にする。
なんとも外見と相反し可愛らしい名前だと、雪はまじまじと魚馬基、ケルピーを見上げた。
「ケルピーって言うの? 可愛い名前だね」
「っ何呑気に話してるんだ、ユキ!」
「だって私、この子の名前知らないから」
「じゃなくて! それから離れろ!!」
「え?」
息を呑んだのはほんの一瞬。
忽ち血相を変えて走り出すジョージに、何事かと雪とラビが目を見張る。
「!?」
ぎちりと、手首がきつく何かに絞められたのを感じたのはその時だ。
危機感を覚えた体が咄嗟に距離を取ろうとする。
しかし手首をぎりぎりと強く絞め付ける何かに絡め取られ、逃げ出すことができない。
「何…っわぁ!?」
「雪!?」
それはケルピーの海藻のような鬣だった。
雪が握っていたはずのそれに逆に手首を絡み取られ、忽ち四肢の動きを奪われる。
半ば強制的にその背に跨るように引き上げられ、雪はニフラーごと地を離れた。
「"アクシオ"!」
咄嗟に懐から取り出した杖をジョージが振るうが、水面を駆け出すケルピーが秒で勝った。
放った魔法は狙った雪の頭上を掠め、水面を絨毯のように滑りケルピーは縦横無尽に駆け巡る。
「わ、わッ!?」
「キュウ…!」
「っニフラー…!」
遠心力により吹き飛ばされそうになるものの、雪の体はケルピーの毛により雁字搦めに縛られている。
腕の中のニフラーの方が危険性は高く、放り出されそうになる小さな体を雪は自身とケルピーの背の間で挟むようにして阻止した。
「なんさあの馬! なんで雪を…ッ」
「ケルピーは水魔だ! 野生なら人を水中に引き摺り込んで襲うことがある!」
「マジかよ!?」