My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「あの…この子。ニフラーの仲間を、見かけたことはないかな? この子が住める場所がないか探していて」
人語が通じるか不安もあったが、ニフラーはどことなく通じている時もあった。
魔法動物となれば、他の動物とは違うのかもしれない。
その望みにかけて問いかけてみれば、魚馬は首を傾げた。
「知らない? この子みたいな魔法動物なんだけど」
腕に抱いていたニフラーを、よく見えるように両手で掲げてみせる。
鼻先を近付けるものの、すぐに興味なく大きな馬面は離れた。
「やっぱり知らないのかな…それとも言葉が通じてないとか」
「ブルッ」
「わ、」
地道に探すしかないかと肩を落とせば、ニフラーには興味を示さなかった鼻先を、雪の背中へと押し付けてくる。
なんの意思表示かわからないが、何か伝えようとしているのか。
甘噛みするように雪の髪を緩く咥えては、軽く引く。
「何? 何か身に覚えがあるの?」
「ブルル、」
「もしかしてニフラーを見かけた? もしその場所がわかれば、案内して欲しいんだけど…っ」
見た目通り賢い頭をしているのか。
問えば、大きな頭が頷く。
ざぱりと波を揺らして水面の上で旋回したかと思えば、湖の淵に横付けするようにして雪へと自らの体を寄せた。
「(まさか…)…乗れって?」
まるでそう語りかけているかのように見えなくもない。
そんなファンタジーの世界じゃあるまいし、と突っ込みたくもなったが、目の前の光景こそが魔法ファンタジーそのもの。
ぱしゃりと水面を長い尾で叩く姿は、催促にさえ見える。
「う…わかった、ちょっと待って。ひとまずラビ達を呼ばなきゃ」
魔法動物の背に乗るなど、魅力的な行為以外の何物でもない。
つい心が躍りそうになるのをどうにか押しとどめて、雪は魚馬の海藻を模した鬣を緩く握った。
流石に一人で乗る訳にはいかない。
「ラビ! ジョージ! こっちに来て!」
『雪!? 何処にいるんさ!』
『他のニフラーが見つかったのかいっ?』
「とにかくこっち! 湖の淵!」
呼べば、姿は見かけなかったが距離は離れていなかったようだ。
茂みを掻き分けた赤毛が、すぐに二つ現れた。