My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「この湖、思った以上に大きいね…ユウ達がもう見えないや」
「そりゃあ森の中だしね。ユキ、そこ木の根っこ出てるから気を付けて」
「あ、うん」
「…ふーん?」
「何? ラビ、さっきから」
湖に沿って進むジョージに、続く雪。
最後尾を歩くラビは、意味ありげな目で雪を興味深く観察し続けていた。
最初こそ知らぬフリをしていた雪だったが、あまりにもその視線が突き刺さる為仕方なしにと振り返る。
目が合った翡翠色の隻眼は、待ってましたとばかりににこりと笑った。
「何もなんも、昨日まであんなにユウと一緒にいんの嫌がってたのに。今日は寂しそうさな?」
「…別に、そんなこと」
「ほんとさ~?」
「痛い。ほっぺつつかないで」
「そんな力入れてね痛ェ!」
「プギュ!」
「おま…ユウだけじゃなく雪関連全般威嚇すんのかよ…」
にやにやと顔を緩ませながらラビの指が雪の頬をつつけば、忽ちに腕の中にいたニフラーが腕に噛み付いた。
「どうどう。怒ってくれるのはありがたいけど、嫌な思いはしてないから大丈夫だよ」
「キュ?」
「うん。嫌な思いはね。面倒な絡みだなぁとはよく思うけど」
「面倒って! オレ心配してんだけどっ?」
ビロードのようになめらかな黒い背中を撫でれば、再び腕の中で大人しく首を傾げてくる。
そんなニフラーに笑いかけた後に、こほんと咳を一つ。
ラビが神田のことで親身になってくれていたのは確かだ。
隣に立つ背の高い赤毛を見上げると、雪は言い難そうに口を開いた。
「まぁ…色々と丸くは収まった、かな」
「へ?…ユウとのこと?」
「うん」
「昨日の今日で?」
「うん」
「…まさかヤッたん?」
「は、はぁ!?」
「だとしたらユウの奴意外と大胆」
「何もしてませんけど!?」
「へ? なんも?」
「何も! 話をしただけ!」
「本当に?」
「本当に!」
顔に熱を集中させてはいるが、断固として首を横に振る雪の言うところ、肌を重ねた訳ではないらしい。
面白味が減ったことに残念と肩を落としつつ、どこかほっとしながらラビは大袈裟に息をついて見せた。