My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
コンコン
雪と神田に当てがった部屋の前。
小さな拳でノック音を鳴らす。
しかし中からは、うんともすんとも返答はなし。
(まだ寝てるのかな?)
首を捻りながら、ジニーの手がドアノブを回す。
気遣いより好奇心が勝った幼心は、扉の隙間から部屋の中に顔だけを覗かせた。
「ユキ?」
見渡した部屋には、並んだベッドとソファベッドが二つ。
しかしこんもりと山を作っているのは、客用ベッドだけ。
幼いながらも、なんとなくそこに踏み入れてはいけない気がした。
しかし更に首を伸ばしたのは、やはり勝った好奇心。
ロンとハーマイオニーが恋仲となった時は、相手が実の兄ということもあり然程興味は示さなかった。
しかし内心では愛や恋だという言葉に憧れは持っていた。
見ず知らずのアジア系の男女二人。
彼らは果たしてどんな恋仲としての形をしているのだろうか。
ぐぐ、と更に肩を出して覗き見る。
ジニーの丸い瞳に、布団から顔を出す二人の横顔が映った。
(わ、あ)
シングルサイズのベッドで、落ちないように身を寄り添わせている。
互いに服は着ている為、疚しいものではない。
しかし神田の腕の中で安心したように眠る雪の姿に、ジニーの胸は高鳴った。
もそりと、布団の中で何かが動いたのはその時。
ジニーの気配に気付いたのか、ぴょこりと顔を出したのは小さな黒い毛むくじゃら。
(ニフラーだ)
昨夜の誕生日会では人の多さに姿を現さなかった愛らしい魔法動物に、別の意味でまた胸を高鳴らせる。
「…?」
ニフラーの動作に連動したのか、神田の閉じていた瞼がゆっくりと開く。
顔だけ起こしその長い切れ目がジニーを見つけると、ぱちりと瞬いた。
「ぁ…あの、」
雪を起こす為に来たのだ。
そのことを伝えようとするが、高鳴る胸に思いの外言葉が出てこない。
瞬いたのは一度だけで、ジニーの様子に神田は口元に人差し指を立てると、しぃ、と静かな吐息を吐いた。
きゅっとジニーの唇が閉じる。
昨夜三人で入浴した時は、雪の味方になると誓った。
なのに何故か、逆らえない。