My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「私、教団では建前ばかりで生きてきたから…ずっと前に言ったでしょ。蓋を開けた私の奥底にあるのは、弱い幼稚な自分だって。…遠慮なんてしないよ。くれるなら全部欲しい。だから…私の好きを全部あげるから、ユウの好きも全部頂戴」
真っ直ぐに貫いてくる視線は、睨んでいるようで違った。
何もかも取り払った剥き出しの瞳は、微かな月夜に光を宿す。
星屑のような光を集めて求める瞳に、神田は捉えられたように動けなくなった。
闇のように暗く、深みのある瞳だと思っていた。
しかし真珠のような涙も流せる彼女の瞳は、こんなにも輝けるのか。
「……」
じっと見返したまま動かない神田に、雪の視線が揺らぐ。
星屑も共に瞳の奥底で揺れる。
それがなんとも言えず────綺麗だと思った。
「…ユウ?」
「……」
「その…黙ってたら、わかんないんだけど…」
「…ああ」
「いや、ああって…」
「惚れ直してた」
「そ…は?」
頷きかけた雪の顔が止まる。
硬直気味に見返す瞳は、先程までの鮮やかな勢いを潜めている。
寧ろその頬の方が、鮮やかに色付いた。
「お前は、俺の知らないもんばかり持ってんだな」
「な、何言って…はい?」
掌を向けて口元を隠す雪の表情は、困惑と羞恥。
先程までの凛とした強さはどこにもなく、神田のたった一言で耳まで赤く染める。
そんな姿に、どうしようもなくこみ上げるものは愛おしさ。
「へ、変なこと言って、紛らわさないでよ…」
「紛らわしてねぇよ。事実を言ったまでだ」
「っなんで、急に」
「急じゃねぇよ。お前が言ったんだろ。全部くれるってんなら、全部貰う。さっきの顔も今の顔も、俺は全部欲しい」
「…っ」
顔を隠す手首を掴んで、ゆっくりと退かせる。
色付くそこに顔を寄せて、触れ合いそうな程の距離に吐息を感じた。
その体に必要な空気でさえも、呑み込んで奪ってしまえたら。
白とも黒ともつかない欲が、神田の中で頭を擡げた。
「今更無しなんて聞かないからな」