My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「俺は──」
「キュ!」
「え?」
「…俺は、お前と」
「キュキュ!」
「え、何」
「だからおま」
「キィ〜」
「喧嘩売ってんのかコイツは」
「わー! 待って待って!」
神田が発言しようとすれば、尽く重なるニフラーの鳴き声。
まるで邪魔しにきているかのような小さな毛むくじゃらを、青筋を浮かべ立った神田の手が鷲掴む。
そのまま握り潰してしまいそうな勢いに、慌てて雪も止めに入った。
「キャプッ!」
「っ」
しかし身の危険を感じたニフラーは一足先に、その小さな口で抗った。
噛み付いた神田の手に、一瞬緩んだ隙を見逃さず。
「あっ!」
慌てる雪の声も聞かずに、ぴょんっと身軽に跳んだ体は窓際へと逃げ出した。
窓は締められていたが、ニフラーは魔法動物である。
閉じられている隙間に、まるで薄い紙のようにするりと体が入り込む。
「ああっ! 待って!」
そのまま外へと逃げ出したニフラーは、ぽてぽてと二階窓から転がり落ちた。
下は牧草地のように柔らかな土地。
無事着地したニフラーを確認はできたが、雪は焦り窓に張り付いた。
「大変…っ外に出ちゃった!」
「別に問題ねぇだろ。元々あいつを放す為に来たんだ」
「だとしても、ちゃんと住み易い場所を見極めて野生に帰さないと。適当に放り出したら、また市街地に来るかもしれない」
「此処から市街地まで距離はある。そんな心配──」
「元々住んでた場所もわからないのに、安易に大丈夫なんて言えないよ。捕まえてくる」
「は? もう夜だぞ」
「ペット屋の店主さんと約束したの」
「おいッ」
「すぐ戻るからっ」
今度は神田の制止を聞かずに、窓を開けた雪が二階からひらりと跳ぶ。
暗闇に紛れるニフラーを追い掛ける姿に、堪らず神田は舌打ちをした。
明らかな面倒事だが、だからといって見過ごす訳にはいかない。
手入れ中の六幻を鞘に戻し手にすると、神田もまた窓枠に足を掛けた。
「ったく!」