My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
そんな思考は、一度も持ったことがなかった。
神田がそんなことを口にすることも意外だった。
だからこそ雪の胸を強く打つ。
「俺は…お前に何をしてやれるのかが、わからない」
しかし先程まで迷いなく強ささえも感じた神田の声が、一変する。
「お前を取り巻く悪意あるものから、守ってやりたいと思うのに…俺自身が、お前に辛い立場を強制させてる」
「そんな、こと」
「そう言い切れるか? お前がノアであっても教団で生きる道を選んだのは、俺と共に生きる道を選んだからだろ。…だから、お前は…いつも、怪我してるんだろ」
「……」
体と、そして心に。
言葉にせずとも、神田の思いがその静かな音から伝わるようだった。
「だから、俺のことはお前が好きに利用するだけ利用しろ。じゃねぇと…」
意外な神田の言葉に胸を打たれたというのに、今度はそのらしくない消極的な姿に胸が打たれる。
感銘を受けてではなく、締め付けられるような痛みだ。
「…何、それ」
気付けば、勝手に口が動いていた。
「私の想いを聞く時だって、言わなきゃ殴るって暴力で脅してきた癖に。急にそんなことでしおらしくならないでよ」
何ができるかわからないから、好きなように利用しろなどと。
そんな意図ならば願い下げだと思った。
「利用するよ。私の人生だから。だからユウも利用してよ。だってユウの足元にある道は、ユウ自身の人生でしょ」
握っていた手を強く引く。
僅かに前に傾く神田の顔を、真正面から睨んだ。
「ユウに寄りかかるだけの生き方は嫌だけど、一方的にユウを利用するだけの生き方も嫌。エクソシストとかノアとか神の使徒とかファインダーとか色んな呼び方があるけど、私とユウはそれで繋がってる訳じゃないでしょ。神田ユウと、月城雪で繋がってる。そこに上も下もないでしょ」
「……」
「手を伸ばすから、捕まえててよ。支えるから、引いて歩いて。涙も全部拾うから、私を笑わせて」
求めるから、求めて欲しい。
「ユウを利用するから。私も、利用してよ」
どちらかに傾き固定された天秤のような関係など、要らない。
それならば不安定でも、互いの重みを量り知れるように揺れ動く関係でいたい。