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My important place【D.Gray-man】

第49章 つむぎ星に願いを



 少しだけ頭を横に振り被ると、雪は切り換えるように視界を閉じた。
 神田が言うように、今ここで見ていたい人は見つけられている。


「両親は…大切だけど。今、私が見ていたいのは、ユウだから」


 ゆっくりと視界を開く。
 望む人は、確かに目の前にいる。


「そこに頼りきりには、なりたくないけど…」


 誰かの為にしか生きられないことは、幸せを見つけられない者の責任転換。
 滑稽で哀れなことだと嗤われた。

 大きく胸の内を抉られるような感覚だった。
 その心無い言葉に傷付いたからではない。
 ノアの言葉に、納得してしまう心があったからだ。

 自分の為だけに歩いていた時は、感じなかった他人から与えられる温もり。
 それは同時に大きな寂しさや哀しさをも生み出す。
 その一欠片一欠片が足場に棘を作り、その場に踏み止まらせるのだ。

 他人に依存することが、雪自身良いことだとは思わなかった。
 その所為で何かに躓いた時に、その他人を理由にしてしまう。
 大きな力をも与えてくれるのに、大きな壁ともなるもの。


「ユウに寄りかかって、生きたくはないから…」


 自身に言い聞かせるように呟く雪の顔は、どことなく暗い。
 じっとその顔を見ていた神田は、微かに吐息をついた。


「頼ればいいじゃねぇか」

「え?」

「それの何が悪いんだよ」

「だ…って、他人に頼ってばかりいたら自分一人で…動けなく、なってしまう」

「なら自分の為に生きればいいだろ」

「だから、ユウに頼らないようにって」

「お前がお前の為に生きるのに、俺は必要なもんなんだろ」


 ほんの少しだけ眉を潜めて、神田は当然のことのように言い切った。


「お前らしく生きる為に必要なら、俺だってなんだって欲すればいい。利用するだけ利用しろ」

「……(利用…?)」

「お前の人生だ、お前が主役で当然だろ」

「…っ」


 雪の顔が驚きに満ちる。


「俺を、自分の人生の為に利用すればいい」

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