My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
(でも、一緒じゃない)
雪はただただ理由もわからずその絶望に苛まれていたが、神田は違う。
雪の対応に不信感を感じて、疑心暗鬼になった結果だ。
そこには明白な理由がある。
「ノアが何を言ったのか、知らないけど…でも私は、ジャスデビ以外のノアとは会っていないよ」
「……知ってる」
「…もしかしたら、」
それでも已然複雑な表情を拭えない神田に、ふと雪はその時の出来事に目を止めた。
「ジャスデビと会った時に、記憶を共有するようなことされたから…私がジャスデビの過去を覗けたように、二人にも私の過去を覗かれたのかもしれない」
「…ノアメモリーを流し込まれたってやつか」
「うん…そこで私の記憶がノアに露呈したなら…今回のことも、辻褄が合う」
「……」
難しい顔で沈黙はしたものの、神田の中でも腑に落ちたのだろう。
一つ溜息をつくと、その顔から迷いを消した。
「他にその双子のノアにされたことはねぇのか」
「他には何も…」
「本当だな? 一切何もされなかったんだな?」
「え、えっと…頭突き、かな? 思いっきり頭ごちんってされたくらい」
「…本当かよ…」
「本当っ嘘じゃないよッ」
何かとノア関係は事後報告になってしまうからこそ、神田が不信感を拭えないのはわかる。
つい階段から身を乗り出しながら、それでも雪は訴えるように神田の目を見つめた。
「隠してたことは、あるけど。でも、嘘を付いたことは、ないよ」
逸らすまいとする雪の瞳に、神田もその目を見返した。
雪自身がノアであることを受け入れ切れずに苦しんでいたことは、わかりきっている。
神田が同じ立場であれば、信用をしていない教団に真実を告げられたのかわからない。
だからこそ、そこを責める気にはなれなかった。