My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
(家族の一員、か…)
そんな彼らに、雪はほんの少しの羨望を覚えた。
懐かしさを覚えるような美味しい手料理。
気遣いなく屈託なく笑える空気。
優しさと愛で溢れた絆。
こんなに温かくて賑やかな家族の一員に、なれたなら。
「それなら貴方達二人が一番の大部屋かしら。二人共、立派な体してるものね」
「どーもっス」
「…俺は何処でもいい」
「あっそれは違うぞ母さん」
「そうそう」
「えっ?」
ラビと神田の高い背を見上げて朗らかに笑うモリーに、再度双子が物申す。
かと思いきや、二人に背を押されてずいとその場に踏み出したのは雪。
「カンダはユキと同部屋さ」
「二人もある意味、家族だからね」
「えっ!?」
「…あ?」
にっこりと笑って告げる双子に、今度は雪と神田が声を上げる羽目になった。
ロンやハーマイオニーのような初々しい反応ではなく、思いきり顔を強張らせた方で。
「あら…あら。まぁ。そうなの?」
「それは気付かなかったなぁ」
口元に手を当てて笑うモリーに、頭部の赤毛を撫で付けながらアーサーも朗らかに笑う。
家の主達は歓迎ムードのようだが、雪の心境は真逆だった。
(え。嫌だ。ユウと二人きり? 二人で一晩? いやいやいやいや。嫌だ)
リヴァプールでの一件以降、仕事以外で二人きりの時間を過ごしたことはない。
ましてや二人で一つの部屋に泊まるなど。
今の雪には、地獄の沈黙耐久時間となることは安易に想像できた。
「そ、そうなるとラビが一人になってしまうから…っ」
「安心しろ、ユキ。ラビは僕達の部屋に招くから」
「ということで今度は別のボードゲームで勝負だ、ラビ」
「思っきし負けたこと根に持ってんさな…別にいいけど」
「よ…っ(よくない!!)」
元々年相応に遊び好きなラビのこと、歳の近いフレッドとジョージとは波長が合った。
今の雪には手痛い事実である。