My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
そんな彼女だから、惹かれたのかもしれない。
しかしそんな彼女だからこそ、そこに甘えるだけの自分にはなりたくなかった。
(お前ばっかり頼ってたら、情けない男のままだろ)
ノアやティエドールに言われたからではない。
神田自身が、その隣で歩いていたいと思ったからだ。
前でも後ろでもなく、雪の顔がよく見えるその傍で。
「でも…今回は私が、拒絶なんか、したから…」
「そういう状況だっただろ。…その状況を無視したのは、俺だ」
「それは…ユウにも、きっとユウの思いがあって…」
「雪」
辿々しくも受け入れようとする雪の声を、その手を引いて止めさせる。
階段に座った雪の目線は、神田と等しい高さにある。
いつもより近いその目線を真っ直ぐに捉えて逸らさなかった。
「お前の器のでかさは知ってる。だからと言って…許されることじゃ、なかった。あの時俺は、お前より、俺の気持ちを優先した」
「……」
「……悪かった」
「…っ」
頭を下げる神田の謝罪に、捕まえていた指先が微かに震えたのがわかった。
その震えは体の芯を通り、雪の唇から形となって伝わる。
「……ほんと、だよ…」
自由な手で己の目元を覆うと、雪は口元を大きく歪ませた。
「全然、話…聞いてくれない、し…いきなり…抱く、し……わたし、だって…大変、だったんだから」
「……」
「変な薬は、打たれるし…体は言うこと、利かないし…っAKUMAやノアに、も、好き勝手、されて」
感情に任せた、涙に似た震え声。
そこから発せられる内容に、神田は無言で耳だけを傾けた。
AKUMAとノアという単語に、黒い眼が微かに揺れる。
「ユウにまで、そんなこと…っ」
「……」
「怖かった、んだから」
何も言葉にできなかった。
口下手な為に、ティエドールのように適切な言葉を選べなかったからではない。
かける言葉が見つからなかったからだ。
女としての雪を貶めたノア達と、同じことをしてしまったのだと改めて思い知らされた。
後悔という言葉では埋め尽くせない程の感情が膨らむ。