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My important place【D.Gray-man】

第49章 つむぎ星に願いを



 合計8つの赤毛が騒がしくモリーの手料理を口にする。
 目の前の食卓に並ぶ料理は全て大皿。
 次々と手にし口にし減っていく様と賑やかな様子に、雪はただただ目を見張った。


「なんだユキ。口に合わなかったのかい?」

「全然料理減ってないぞ」

「え? いや、食べる。食べるよ。美味しい」


 左右から覗く双子の目に、慌てて目の前のグラタンにパクつく。
 熱さにふぅふぅと口から息を漏らしながら、雪はもう一度呟いた。


「…美味しい」


 イギリスの郷土料理。
 自分には懐かしさを憶えるはずのものではないのに、何故か舌に馴染む。
 素直に美味しいと思えた。


「あらそう? お口に合ったならよかったわ」

「お酒は飲める口かい? よかったらワインでも」

「アーサー! もう酔ってるの!?」

「ングっよ、酔ってないぞ。そうだ、軽めのシャンパンは?」


 慌てて切り替えるアーサーの姿に、成程彼女が家を回しているとはこのことかと雪も納得した。
 正に鶴の一言だ。
 しかしそこに嫌な空気は一切ない。
 逆に温かくなるような雰囲気だった。

 ふ、と口元から笑みが綻ぶ。


「私、そのワイン気になります。よければ頂いてもいいですか?」

「! ああ、勿論だとも」

「まぁっ気遣いなんていいのよ?」

「そうだよ、いくら誕生者の勧めだからって」

「それで、彼女はフレッドとジョージが連れて来たんだって?…お前達、好みも同じだったんだなぁ」

「どういう意味だいそれ」

「母さんと同じ誤解しないでくれるかな? ビル兄サン?」


 一言申せば、途端に口々に参加してくるウィーズリー一家。
 その勢いに呑まれながらも、雪の顔は始終柔らかかった。


(なんつーか…ファインダー仲間とつるんでる時とは、また違う顔さな)


 その表情の変化に目敏く気付いたのは、鋭い観察眼を持つラビ。
 くぴりとお茶を喉に通しながら、そんな雪を見るラビの目元も柔らかい。
 初対面の相手には表向きの顔で適切な距離を置ける雪のことを、よく知っていたからこそ。
 赤毛達に囲まれて笑う雪には、そんな姿が重ならなかったからだ。

 まるで親しき間柄のように。

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