My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
ノアの言う通りだ。
雪を苦しめているのは、他ならない神田自身。
(違う。ノア野郎のことだけじゃない)
気付かされずとも、知っていた。
教団こそが憎しみの対象である神田には、雪の気持ちが手に取るようにわかったからだ。
それでもそこに目を向けようとしなかった。
自分とは違い、教団に体と心を傷付けられようとも一人で立ち続けられた雪の強さに、不安もあったがどこか安心もしていて。
それでも尚自分を、教団の者を受け入れられるその懐の広さに。
言葉では言い表せられない温かな彼女のその抱擁に、甘えた。
自分の安らぎの為に、雪を求めて傍に縛り付けた。
「……俺は…」
窮地に追いやっているのは自分なのに。
何を言ったらいいのか。
何を伝えるべきなのか。
どんな想いも薄っぺらな言葉にしかなり得なくて、神田は先を続けることができなかった。
「でも、ユウもきっと苦しかったんだよね」
その先を続けたのは、予想もしない雪の言葉だった。
声もなく驚く神田の目が、俯いたままの雪を捉える。
「自分のことばかり先にきて、気付けなかった…見えてなかった。ユウの、こと」
「……」
「…怖かった、から…知ろうとしてなかった」
視線は合わない。
雪がどんな顔でそんな言葉を紡いでいるのか、見て取れない。
それでも驚きを隠せなかった。
(どうして)
「逸らして、ばかりだった」
(なんで)
「目を開けてなきゃ、見えないのに、ね」
そんなことが言えるのか。
頭の中では理解できた。
心身共に地獄へ追いやった教団で、他者と関わり生きることを選べた雪だ。
彼女の芯は、きっとずっと神田より強い。
それが不思議で堪らなかった。
アルマのように、支えてくれた存在がいたかもわからないのに。
何故そうも向き合おうとできるのか。
「…んで…」
気付けばそれは、音となって零れ落ちていた。
唖然と呟く神田に、俯いていた雪の顔が上がる。
覇気のない表情は変わらずだったが、そこに悲観的なものは見えない。