My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
不時着した状況に対してか、他の意味でか。
険しい顔をしたまま、神田の腕が雪の体を解放する。
「ぁ…ありがと…」
「…別に。目の前で怪我される方が面倒なだけだ」
体を起こす雪を待つことなく、開いたドアから外に出る。
素っ気無い神田の言葉に肩を下げるも、ふるりと首を横に振る。
「あれがユウの初期設定みたいなもんだしね」
「キュ?」
「いちいち気にしてたら、鉄のハートでも耐久足りないってこと」
首を傾げるニフラーに苦笑を返して、雪も目の前の草原に降り立った。
「わあ」
見渡す限り、青々とした草木。
ざっと見ただけで教団の巨大な食堂より尚広い。
遠目には林のようなものも見え、その手前には煉瓦で出来た煙突のある家が一件。
「あれがフレッド達の家?」
「そうさ」
「ようこそ、我がウィーズリー家へ」
「素敵な家だねっ」
それこそ児童文学書の物語に出てきそうな、古風らしさと味のある家だ。
「約束の時間内には着けたようね」
「でも愛車がこんな状態じゃなぁ…」
「何言ってるんだロン。"いつも"こんな状態だろ」
「寧ろ外見はよくなってるんだから、父さんも喜ぶさ。さぁ弟よ、こいつをガレージに頼む」
「こういう時だけ!」
ぽんとフレッドから放られた車のキーを受け取るロンは、心外との顔をしていたが運転自体は好きらしい。
ロンの手によって再びエンジンをかけたフォード・アングリアが、今度は大人しい牛のようにのろのろとガレージに向かって進む。
車から下ろした荷物を肩に掛けながら、雪は今一度空気の気持ちいい空を見上げた。
「っ?」
くらりと、一瞬気が遠くなる。
思わずふらついた足元に、後ろから両肩を何者かが支えた。
「っと。大丈夫さ?」
「ラビ…うん。ごめん」
「立ち眩み?」
「かな」
ジェットコースター以上に暴れ車と化したフォード・アングリアに揺られた所為だろうか。
苦笑する雪に、ラビの手が優しくその背を押す。
「気ィ付けろよ」
「うん。それより花束は大丈夫かな、潰れてない?」
「間一髪な。オレが死守したお陰さ」
「よかったー、ありがとうラビ」