My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に.
「はぁ…っは…!」
一度も足を止めず走り続けて、見えた姿に声を張り上げる。
「ミランダさん…ッ!」
「あら雪ちゃん、おかえりなさい。見て、ハワードさんチャンピオンさんと良い勝負なのよ」
「結果はっ? 勝ちそうっ!?」
ベン・マーチンの墓石の側に立つ姿に声をかければ、笑顔で振り返る。
そんなミランダさんに構う間もなく、勢いのままチェス盤を覗き込んだ。
「静かにして下さい、集中できません」
チェスは未だ試合の最中。
真剣にそこに向き合うリンクさんに咎められる。
駄目だ、まだイノセンスの指輪は確保できてない。
「あら? アレンくん達は?」
「それが──」
きょとんと問いかけるミランダさんに、事態を説明しようとして気付く。
ミランダさん達を守るように張ってあった、結界が消えてる。
「キエさん、結界はっ?」
「それが、とうとうバッテリーが切れてしまって」
「すみません」
問えば、キエさんとマオサさんが申し訳なさそうに謝ってくる。
嫌な予感は当たった。
どうしよう。
これじゃもしAKUMAが此処へ来たら、イノセンスを守れない。
「それより、どうしたんです? 息切らして…」
「AKUMAが出たの、複数。今は神田達が足止めしてくれてる」
「えっ! AKUMAがっ!?」
「ど、どうしましょう…っ予備のバッテリーはないのに…!」
「落ち着いて、策はあるから」
慌てる二人を制して、ミランダさんに視線を変える。
負担をかけてしまうけど躊躇はしてられない。
「ミランダさん。負担をかけさせて悪いけど…"時間吸収(リバース)"したまま、このお墓の周りを"時間停止(タイムアウト)"できる?」
その二つはミランダさんのイノセンスだけが持つ特異な能力。
壊れた物の時間を吸い出して完全修復する能力と、包囲した物の周りの時間を止める能力。
べン・マーチンの墓の周りを包囲して時間を止めれば、其処は一時的に周りから切り離された状態になる。
その間は外側からは、包囲された空間にどんな影響も与えることはできない。
つまり結界の代わりとなる。
「え、ええ。やってみるわ」
不安げに、それでも拳を握ってミランダさんは頷いてくれた。
よし。