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My important place【D.Gray-man】

第18章 ロザリオを胸に



 一気に崩れる足場に、左右腕を掴んでいた二人の手が離れる。
 ミュンヘンの墓地でつい想像してしまった、ホラー映像と重なる。
 墓地の地中から死体が這い出てくる、そんな映画のようなワンシーン。


「うわ、わ…!!」

「雪さん!」

「チィッ!」


 だけど地中から現れたのは、墓地に埋められた死体なんかじゃなかった。
 勢いよく飛び出してきたのは、人の何十倍もある歪な巨体。


「獲物見ーっけ!」


 機械的な繋ぎ目の四肢を持ち、剥き出しの歯茎と鋭い歯を見せてカタカタを鳴らし笑う。
 私の足を掴んだまま、易々と宙に持ち上げるAKUMAだった。


「出やがったなエクソシスト!」

「ってことはァ…」

「イノセンス見つけてくれちゃったりした!?」


 一体、二体、三体。合計四体のどれも似た機械のような巨大なAKUMAが、地中から姿を現す。
 発言からしてAKUMA達も、ベン・マーチンのイノセンスのことを狙っているんだ。


「こいつはエクソシストじゃねぇな、弱そーだ」

「わっちょ…ッ突かないで下さいっ」


 逆さに宙吊りにされたまま、つんつんと大きなAKUMAの指が体をつついてくる。


「ったく、簡単に捕まってんじゃねぇよ!」

「雪さんを責めてる場合じゃないでしょ!」


 逆さまの視界に映ったのは、四体のAKUMAを前に発動させたイノセンスを構える神田とアレンの姿。
 捕まったのは私の責任です、私が悪いから。
 だからこんな時まで喧嘩しないで下さい、お願いします。


「私は大丈夫だからっAKUMAを」

「ほーれほれ」

「わっ! ちょ…っ!」


 声を張り上げようとすれば、足を掴んだ手にぶんぶんと左右に揺さ振られて視界が大きく揺れる。
 ちょっとそれ駄目…!
 気持ち悪くなるから!


「は、吐く…ッ吐くからそれ…!」

「ぎゃはは! 吐くってよーっ!」

「弱ぇなァ」


 ぐらぐらと大きく揺れる視界と頭に、嘔吐感が競り上がりそうになって咄嗟に口を両手で押さえる。
 そんな私にゲラゲラとAKUMA達は愉快そうに笑った。
 私は玩具じゃないんですけど…!

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