My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
寝間着代わりであろう、ラフなシャツに短パン姿の雪を改めて見る。
そんな姿で出てくるのが悪い、とも思ったが、急な事態だった為に責められなくもない。
六幻は持ってきているが、同じく薄着の神田も貸す上着などない。
「…ならさっさと戻ればいいだろ」
ようやく出た言葉は、そんな素っ気ないもの。
愛想笑いをしていた表情を乾いたものに変えて、そうだねと雪は小さく呟いた。
「でもニフラーがまだ…」
「キュクっ」
「ん?」
辺りを散策していた小さな毛玉が、ぴょこんと雪の膝に軽い身のこなしで乗ってくる。
膝の上をくるくると回ったかと思えば、自分の居心地の良い体勢を見つけたのか。
腹這いに丸くなり、ぬくぬくと寛ぎ始めた。
「もういいの? じゃあ戻」
「ピュイっ」
「…嫌なの?」
腰を上げようとすれば、いやいやと首を横に振る。
その小さな生き物の我儘に溜息をつきつつ、雪は背中を階段へと凭れた。
「よくわかんないけど…君は、あったかいね」
じんわりと膝から伝わる、生き物の温かさ。
そっとその丸まった背中を撫でれば、逃げる素振りもなくすぴすぴと鼻を鳴らす。
小さな愛嬌ある生き物の姿に、雪は自然と顔を綻ばせた。
「(なんだか、眠ってしまいそうだなぁ…)…ふ…」
「寝るなよ、そんな所で」
「っえ? あ、ウン」
心地良い体温を分け合っていると、目まぐるしい一日の疲れが襲ってきた。
うつらと小さく傾きかけた顔が、神田の鋭い指摘にハッと上がる。
「だ、大丈夫」
「本当かよ」
「うん(…と、いうか)」
一瞬でも寝落ちかけた自分に驚いた。
威圧を感じていた神田との空気。
それは今もなくなった訳ではないが、つい睡眠に落ちてしまいそうになるだけ、空気は息苦しくはない。
(つき合う前に戻った感じがしてたけど…そうでも、ないのかな)
あの頃は、同じ空間に一秒でもいることすら窮屈で堪らなかった。
しかし今は秒で耐えられない程のものはない。
あの頃と今とで大きく変わったのは、互いの関係性。
その繋がりはまだ、残っているのだろうか。