My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「く…ッせめてこのレバーが上がれば…! 皆掴まってろ!」
「掴れって何処に…! イテッ!!」
狭い車内。
天井に頭をぶつけるラビに、振り回されるハーマイオニー。
雪もまたどうにか受け身の体勢で体を丸めていたが、目の前でふわりと無重力で飛ばされる黒い影を見た。
「ぁ…っ」
「キュゥ…!」
じたばたと小さな手足で空中を掻いているのは、連れてきていたニフラー。
小さな体が開けていた窓硝子の隙間から放り出されんとする様に、咄嗟に雪は飛び出した。
伸ばした手は辛うじて、外に放り出されていたニフラーの足を掴む。
胸元に抱き寄せると、庇うように落下する車内の中でどうにか地面へと背を向けた。
「っ…!」
「もうダメだ地面が…! ぶつかるッ!!」
「んの…ッ!」
「上がれぇええ!!!」
レバーを引き上げるフレッドの手に、身を乗り出したジョージの手が重なる。
渾身の力で共に引き上げたレバーが、ぐぐ、と僅かに頭を上げる。
習うようにして微かに上がる車体の頭。
咄嗟に強くアクセルを踏み込むフレッドに、ブォン!とフォード・アングリアは一瞬空へと向かって駆け上がった。
のも束の間。
ガダン!と凸凹道を下るように、尻から迫っていた地面へと着地したのだった。
「ッ…!」
ガタガタと激しく揺さぶられる車内。
何度か前輪と後輪を交互に跳ね上げた後、ようやく車はブレーキに習い止まった。
プシュゥウウ…
力のない呻きのような煙を吐き出して、バカンッと一斉に全てのドアが開く。
「と、止まった…」
「間一髪…」
「相変わらずの、気分屋だな…」
力無く座席に埋もれるウィーズリー兄弟の言い分を聞くところ、この騒ぎは一度や二度ではないらしい。
同じくほっと息をついた雪が、固く瞑っていた目と体の力を抜く。
「…?」
その時になってようやく、着地の際の衝撃がなかったことに気付いた。
激しく体は揺さぶられたかと思ったが、どこかにぶつけた感覚はない。
「(なんで…)…!」
状況を把握しようとして気付く。
小さく丸めた体は、包むように何かに抱きしめられていた。
ようやく開いた目の前には、見知らぬコート。
僅かに視線を上げれば、厳つい表情をした美形と目が合う。