My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「──さて諸君。投車はまもなく離陸の体制に入りますので、シートベルトの着用をお願い致します」
ジョージの隣で魔法話に花を咲かせること、30分。徐々に高度を下げて滑空していくフォード・アングリアに、運転手のフレッドが戯けた様子で告げる。
どうやらウィーズリー家はもう間近らしい。
あっという間に過ぎ去った空中散歩に、雪は残念そうに笑った。
「もう着いちゃったんだ…早いなぁ」
「空を飛べば、文字通りひとっ飛びさ。遊泳は楽しかったかい?」
「うん、とっても! また乗りたいな」
「勿論、ユキが望むならまたいつでも」
「調子の良いこと言わないで。今回は目を瞑ったけど、違反なのよ。これは」
「そんなつれないことを言うなよ、ハーマイオニー。折角ユキが楽しんでくれてるのに」
「そうだぜ。ハーマイオニーなら同じ女子同士、ユキの気持ちもわかるだろ?」
「確かに、ホグワーツに通えなかったことを思えば…」
「ロンまで! そうであってもこれは違反なんですからね!」
「やっぱり手厳し…い?」
赤毛の三兄弟の意見を前にして、一切譲らないハーマイオニー。
フレッドが苦笑混じりに溢した語尾は、突如不穏な音となって漏れ落ちた。
ガタン、と不規則に揺れる車内。
「どうした? 兄弟」
「いや…ん?」
「どうしたんだよ」
「高度メーターが言うことを…ん、ん?」
「ちょっと。フレッド?」
「ま、待て待て諸君。落ち着きたまえ!」
「お前が落ち着けさ! 手元のレバーめっさ引いてんじゃんかッ」
「何が…わあっ!?」
がくん、がくん、と段を落ちていくかのように、車体が急激な落下で高度を下げていく。
揺れる車内に、雪達の体がその度に浮く。
「どうやら高度メーターの調子が可笑しいみたいだ…!」
「なんで!? 点検は終えたはずだろ!?」
「僕らが綺麗にしたのは車体だけさ! 魔法機器のオンボロさは変わってない!」
「何よそれ…きゃあっ!」
「ハーマイオニー!」
徐々にその感覚も狭まってくる車体は、とうとう頭から地面に向かって落下を始めた。
緩やかな滑空などではない。
その無重力にも思える感覚は、文字通りの落下だった。