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My important place【D.Gray-man】

第49章 つむぎ星に願いを



「浮遊魔法は違法じゃなかったんかよ…」

「だから言っただろ」

「僕らには透明ブースターがある」

「だからなんさ、その透明ブースターって」

「僕らの視点からじゃわからないよ」


 ラビの問いに応えたのは、諦めた表情で肩を竦めているロンだった。
 隣にいたハーマイオニーも振り返り、その答えを告げる。


「今、この車は周りからは見えないようになっているの。だから浮遊していても咎められないってこと」

「へ? 今透明になってるんさっ?」

「俺達からは見えてるじゃねぇか」

「そりゃあ、運転している僕らが見えなかったら問題だろ」

「魔法だからね。そういうもんなのさ」


 納得のいかない顔をしているものの、それ以上反論する気はなく。
 改めて腕組みをすると神田は座席に深く座り直した。


「いいの? ハーマイオニー」

「良い訳じゃないけど…おじ様の誕生日会に間に合わせる為には、仕方ないかもね」

「流石我らのハーマイオ二ー!」

「話がわかる!」

「褒めたって許した訳じゃないわよ」


 煽てる双子には、冷たい視線を。
 不安そうに見てくる雪には、諦めの溜息を。
 常識の壁とも言える彼女が口を噤めば、もう誰も双子を止める者はいなかった。


「さぁ、これで我が家までひとっ飛びだ!」

「速度を上げるぞ! 掴まってろよ!」

「ちょっと…! 安全運転でお願いよ!?」

「「勿論さ!!」」


 ブオン!とエンジン音が高らかに呻る。
 青い空を高く高く、走り昇っていくフォード・アングリア。
 ぐんぐんと標高が上がり目下の景色がミニチュアのように変わっていく。
 その様に、雪は目を輝かせて窓に張り付いた。


「凄い高い…! 箒の時の比じゃないねっ」

「そりゃあ車だからな。生身で乗ってる箒よりもっと高く飛べる」

「ユキは高いのがお好みかい?」

「うん。ずっと見ていたい」


 両手を窓に張り付けて、鼻先も硝子に触れられそうな距離で景色を拝む。
 どこまでも続く果てのない青い世界。
 その景色に一人眉を潜める神田とは違い、雪の表情は明るい。


「遮るものが何もない世界って…いいな」


 そこにはほんの少しの、切望も混じえて。

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