My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「お、おいおい待てよこの車に浮遊魔法は掛けられてないんじゃ…ッ」
青褪めるラビの言葉に、雪も身を竦ませた。
今し方、物語と史実は違うと聞いたばかり。
このまま崖へと突っ込めば、車がどうなるかなど考えずともわかる。
「そこはご心配なく!」
「僕らには透明ブースターがついてる!」
「だからなんさその透明ブースぎゃああああ!!!」
ラビの突っ込みは最後まで形を成しえなかった。
速度を上げたフォート・アングリアは、一度も逸れることなく見事に崖からダイブしたからだ。
「っ…!」
ふわりと一瞬浮く、無重力。
思わずニフラーを抱きしめたまま強く目を瞑る。
「…?」
しかし無重力は一瞬で、ジェットコースターのように落ちる感覚は雪を襲わなかった。
恐る恐ると目を開ける。
見えたのは、車体と同じ優しい青。
「…え?」
「…う、浮いて、る…?」
「…どういうことだ」
落下すると思われていた車は、空と同化するように高く舞っていた。
唖然と窓の外を見る雪に、へろへろと力の抜けた体を持ち上げるラビに、怪訝な顔をする神田。
それぞれの反応を目に、フレッドはにんまりと笑った。
「時に史実は、物語より面白いものなのさ」