My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「うっわぁ…!」
堪らず上がる歓声。
きらきらと目を輝かせて目の前の機械を見つめる雪に、ラビは苦笑を、神田は怪訝な表情を見せた。
フレッドとジョージに誘われるまま、彼らの父であるアーサー・ウィーズリーの誕生日会に招かれた。
赤の他人が同席して良いのかと雪も渋ったが、彼は生粋のマグル好きだと言う。
ぜひにと双子に誘われるまま、名残惜しむハグリッドと別れ、適当に見繕った花束を手に歩んだ先。
其処に駐車されていたのは、一台の車だった。
丸い二つのランプが目玉のようにも見える、全体的に丸みを帯びた可愛らしいデザインのフォード・アングリア。
空と同化しそうな優しい色合いに、洗車したばかりのようにピカピカの車体。
一見して普通のイギリス車だが、雪の目には異なり映ったようだ。
「流石ユキ、反応が相変わらず期待以上で嬉しくなるよ」
「だってこの車、ハリポタに出てた車と同じ…!」
「出たな、ポッタリアンユキ」
「あら。雪って、あのシリーズのファンなの?」
「僕も好きだよ、あれ。特に主人公の親友の赤毛の少年とか」
「ロンも読んでるの? 私もあのキャラ好きだなぁ」
「本当っ?」
「すっげー普通に場に溶け込んでるさ。雪の奴」
「……」
「そんな怖い顔すんなよ、ユウちゃーん」
「元からこの顔だ」
ロン達と和気藹々会話を弾ませる雪に、神田とは対象的にラビの顔は明るい。
「元々雪は他人との距離を計るの上手い奴だけどさ。ああもノーガードで絡めてる姿は珍しいんじゃね?」
「……」
「だからもうちっと一緒に喜んでやれよ」
ラビの言うことは、確かに的を得ていた。
他人と打ち解けられる術を持っている雪だが、それは元々現地調査の多いファインダーとして身に付けた術。
故に初対面の相手には、いつも一枚仮面を貼り付けていた。
その雪がこうも素で無邪気に歓喜するのは、この魔法界のお陰か否か。
ハリー・ポッターシリーズなど知らない神田には、まるで理解できない世界観だ。
しかしそこに楽しげに染まる雪には、目が止まる。