My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「喧嘩ップルってやつ? 似てるよな」
「あの二人がそういう仲かなんて、まだわかんないでしょ」
「いーやオレにはわかるさ。どう見ても惚れ合ってんだろ」
「なんでそんなこと…」
「いい例が此処にいるから」
「……」
小さな呟きは、雪にしか聞こえていない。
ようやくちらりと動いたラビの隻眼が捉えたのは、席にも座らず少し離れたカウンター側に立っている神田。
流石にそれには雪も反論を止めた。
「…いい例って、何」
同じく顔をラビに傾けながら問う。
以前ならそう疑問には思わなかったかもしれない。
しかし今は、神田と喧嘩ップルなどと言われる微笑ましい関係性ではないことを実感している。
果たしてその状況下でも、互いに惚れ合っているようになど見えるのだろうか。
純粋な疑問を向けてくる雪に、ラビはぱちりと目を瞬いた。
「そんなふうに…その…私達も、見えてる、の?」
辿々しくも、問い掛けてくる。
その答えを求めている雪の目を見返して、それから再度離れたカウンター席を見やる。
さっきまで微塵も興味のない顔をしていた神田が、顔を寄せ合う雪とラビに、眉間に皺を刻んでいる。
以前のようなこれ見よがしな殺気は放っていないものの、どう見ても不機嫌な顔だ。
(どう見たってそうとしか思えねぇさ…)
うへあ、と内心で溜息。
ラビの予想通り、岩のように意志の強い神田のこと、想いもそう簡単に変化などしないのだ。
「見える見える。つーかそうとしか見えない」
「本当に? 適当に言ってないそれ?」
「どう見たってそうだろ。見ろよあの仏頂面」
「ユウの仏頂面は通常装備だよ」
「いや確かにそーだけども」
アレンやラビに向ける仏頂面とは違うのだ。
この僅かな差をどう伝えるべきか、ラビが的確な言葉を選び出す前に、カランッと扉の開閉ベルが鳴った。
「やあやあ! 皆さんお揃いで」
「ユキ! 本当に来てたんだな」
皆の注目を集めたのは、太陽のような明るい赤毛。
足取り軽く姿を見せた双子の姿に、途端に雪の顔が綻んだ。
「フレッド! ジョージ!」