My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「昔に読んだ歴史書でしか見たことがなかったけど、本当にこんな綺麗な人がいるものなのね」
どうやら本の虫であるハーマイオニーは、日本の歴史にも触れていたらしい。
興味深く神田を見上げてくる姿勢に、ぷっと噴き出したのはラビだった。
「小野小町って…ぶふッユウ、女に間違われデフッ!」
「黙れ」
しかし皆まで言わせず、神田の怒りの拳が落ちる。
何故わかっていて毎度やるのかと、雪はラビを見る度に思っていたが最近はそれが彼の性格なのだと理解した。
ある意味では尊敬する性格だ。
「言っておくけど、女だなんて一言も言ってないわよ。私」
「イデデ…へ?」
「あ?」
「だから、貴方が男だなんて見ればわかるってこと」
しかしハーマイオニーは神田が男だとわかっていて、褒めたのだと言う。
今度こそ驚きを隠せないラビの横を華麗に素通りして、ハーマイオニーは知的な笑顔を見せた。
「本当に小野小町みたいに、その髪が綺麗だと思っただけ。立ち姿も姿勢が綺麗だし。それを褒めるのに男も女も関係ないでしょ?」
「……」
「それとも貴方は嫌だった?」
「……別に」
居心地悪そうに目線を逸らすものの、綺麗や美しいなどの褒め言葉を向けられれば青筋を浮かべていた神田からすれば、酷く珍しい反応だ。
それを目の当たりにして、今度は雪が驚いた。
洞察力は鋭い神田だ。
ハーマイオニーのその言葉から、偽りなき思いと素直な感情を読み取った結果なのだろうか。
(ハーマイオニーって、素敵な女の子だなぁ…)
美形なんて嫌いだと口癖のように言っていた雪からすれば、そんな言葉思い付きもしない。
例え今は神田に対して特別な感情を抱いていても、だからと言ってハーマイオニーのようには振る舞えない。
「……」
ハーマイオニーはリナリーのように、特別目を見張る美人ではない。
それでも神田の隣に並ぶ姿が極自然なものに思えて、自然と雪の眉尻は下がった。
外見の美しさではない。
彼女の内面の美しさを感じたからこそ。
「キュイ」
神田達を見守る雪の腕の中で、抱かれていたニフラーが鳴き声を上げる。
小さな小さなその声に見下ろせば、粒らな二つの目がじっと雪を見上げていた。