My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「いつの間に仲良くなったんさ雪…」
「そういうつもりじゃ…あ。(ラビのピアス、まだ返してもらってない)」
店主へ渡そうとすれば、抵抗するように雪の腕にしがみつく。
どうしたものかと考え倦ねた雪は、はたと思い出した。
そして腕の中のニフラーと向き合う。
人語も通じる魔法動物。
話せば、解り合えるかもしれない。
「じゃあ条件交換だよ。助けてあげるから、ラビのピアスを返してくれる?」
じっと粒らな瞳を見つめ問えば、二フラーは暫し首を傾げていたものの、やがて観念したように己の腹のポケットへと手を入れた。
中から取り出したのは、見覚えのあるラビのピアス。
「ありがとう」
渋々と差し出す小さな手からそれを受け取ると、雪は優しく二フラーの体を抱き直した。
条件を呑んでくれたのならば、こちらも約束を守らなければならない。
「店主さん。このニフラーは私が責任を持って、此処から離れた場所で自然に戻しますから。それで許してもらえませんか?」
「…ううむ…仕方ないね。他の動物達は彼のお陰で捕まえられたし。君がそれを約束してくれるなら、ね」
「勿論です」
どうやら他の逃げ出した魔法動物達の確保に、ラビが一枚噛んでくれていたらしい。
ニフラーと同様、渋々とも納得した店主に雪はほっと頭を下げた。
悪戯好きだそうだが、そういう特性があるのなら致し方ないことでもある。
ニフラーの為にも、なるべくなら穏便に事を治めたい。
その後、店を放る訳にもいかないと、店主は早々と籠を片手に裏路地を後にした。
雪達も暗い路地に背を向けて、ようやく一息つく。
「…それで、」
そして、ようやく一番の問題へと向き合うことができた。
「なんで…ユウが、此処に」
「ユウちゃん!」
いるのかと、問おうとした雪の声は遮られた。
それ以上に大きな声で捲し立てたラビが、神田の肩に腕を回し再び路地裏へと引き込んだからだ。
「なんで此処にいんのっ?」
「……」
「雪とは接触しないって話で」
「うぜぇッ」
「ふグッ!?」
こそこそと捲し立てるラビの距離の近さに、苛立つ神田の拳が腹部へとめり込む。
じろりと睨む顔は不快に満ちていた。