My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
「俺の代わりに監視役を務めるっつったどっかの馬鹿が、あいつを野放しにするからだろ。あ?」
「う"っ。そ、それは…色々ありまして…」
「色々あったらあいつが伯爵紛いにやられてもいいのか刻み殺すぞ。あ"?」
「すびませんッ!!」
「あの…ラビ? 何騒いでるの?」
殺気立った目と尤もな言葉で責め立てる神田に、土下座する勢いでラビが謝罪する。
その一切の会話を知らない雪が、恐る恐る背後から声をかけた。
「なんでも! だいじょーぶさ!」
「本当に?」
「ホント!」
「ならいいけど…それで…ラビが呼んだの?…ユウの、こと」
言い難そうに問い掛けてくる雪に、ぎくりとラビも言葉を詰める。
問われるのは当然だろう、この魔法界へはラビと二人だけで訪れたと彼女は思っていたのだから。
今回の雪の外出は、彼女から提案された時点で難しいだろうとラビは悟っていた。
ノアに攫われそうになったばかりの雪を、そう簡単にコムイが外に出すはずがない。
ラビが監視と護衛をしても、その許可は下りないだろう。
しかし雪の気持ちを汲んでやりたいと思ったのも事実。
だからその為の保険を、ラビは二つ作った。
一つは、フロワ・ティエドールという後ろ楯。
大元帥の下に並ぶ、室長と同格の元帥達。
その元帥格の者が味方に付いてくれれば、これ程心強いことはない。
数少ない元帥から誰を選ぶか、ラビの中でティエドールは即決だった。
穏やかな性格の中に冷静な判断力も持ち、ラビの師も一目置いている彼を後ろ楯にすることができれば、自然とブックマンの許可をも得られるだろう。
そしてティエドールは神田経由で雪のことを娘のように思っている人物だ。
彼女の為と頼み込めば、きっと快く協力してくれるはず。
ラビのその予想は的中し、ティエドールは中庭での相談に返事一つで乗ってくれた。
そしてそこで漏れなく付いてきたのが、神田ユウという雪にとっての渦中の人物だった。
神田の地獄耳に雪の名を拾われ脅しのように問い詰められ暴露した結果となったが、元々ラビは神田を誘う気でいた。
彼こそが、他ならぬ二つめの保険だったからだ。