My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
ほとんど反射的に、六幻の柄を握り返していた。
ヒュッ
風を斬る音と共に、巨大な翼に亀裂が入る。
途端に翼は神田の振るった六幻により、四方バラバラに斬り刻まれた。
「キギィイギキイ!!!!」
獣の鳴き声とも機械の摩擦音とも取れない、奇妙な劈く悲鳴だった。
彫刻の体を戦慄かせた"それ"が、苦し紛れな姿を見せる。
「いたさ! 雪!!」
「! ラビ…ッ」
其処へ荒々しく駆けてくる足音が複数。
振り返った雪の目に、ラビとあのペットショップの店主の姿が映り込んだ。
「何処まで行っ…」
しかし雪の下へと駆け寄った途端、ラビの顔がぎょっとしたものに変わる。
雪ではなく、雪越しに見つけたその姿に目を剥いたのだ。
「げ…なんで、ユウが、いんの…?」
雪と同じ反応を見せるラビに、しかし神田の目は鋭く目の前の謎の彫刻を捉えたままだ。
とどめを刺そうと六幻を振り齧れば、突如謎の彫刻はぐるぐると体を回転させ始めた。
「わっ今度は何…!」
「へ? 何が? つかなんさあれ!?」
「気付くの遅ッ! さっきから赤い雨が降ったり千年伯爵が現れたり、奇怪現象が起こってるんだから!」
「千年伯爵!? マジさ!?」
目にも止まらぬ速さで高速回転をする謎の物体が、赤い雫を飛ばしピエロの笑い声を上げ白い翼を広げる。
まるで壊れた機械のように、ちぐはぐに姿を成しては奇妙な声を上げている。
「意味はわかんねぇが、勘に障る奴だ」
六幻の刃を光らせ殺気を放つと同時に、神田がその謎の物体へと斬りかかった。
再び目にも止まらない速さで攻撃を回避されたが、六幻の切っ先は獲物に触れていたらしい。
「キュギギギィ!!!」
声とも音とも取れない悲鳴を上げると、それは路地裏の壁を滑るように這い上がった。
そして瞬く間に、屋根の向こう側へと消えたのだ。
「…逃げ、た…?」
「チッ」
「なんだったんさ、アレ…」
余りの速さに追い掛けることもできない。
呆然と立ち尽くす雪達の理解を、遥かに上回る謎の存在。
あれはなんだったのか。