My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に
「…好き、って…」
すると、きょとんとこっちに向いた銀灰色の目が瞬いて、照れたように微かに頬が朱色に変わった。
わぁ…可愛いなぁ。
素直にそんな感情が浮かんで、思わずまじまじとアレンの顔を見てしまう。
いつもの紳士な笑顔もいいけど、こういう年相応な表情はもっと好きかもしれない。
「うん、その顔いいね。今日見た中で一番いい」
今日一日、作ったような表情が多かったアレンだから。
つい本音が口をつく。
「出せる時でいいから、偶にはそういう顔も見せて欲しいな。紳士で大人びたアレンも良いけど、私はそっちの方が好きかも」
赤く頬染めた顔が、じゃなくて年相応なアレンの顔が。そういう意味で笑いかけた。
いつも大人びた言動が多いアレンだからこそ、こういう姿はなんだか安心する。
するとアレンの頬は、更に朱色に色付き染まった。
わぁ…本当に可愛いなぁ。
「ぁ…あの、雪さん」
「うん?」
顔を向けさせたまま、まじまじと見ていれば、照れ臭そうにアレンが視線を逸らした。
「後ろの神田の顔が、凄いことになってます」
…え?
「俺のことを全無視とは、良い度胸だな」
うわ。
後ろからドスの効いた声が響く。
大変、神田のこと忘れてた…っ。
「違…ひっ!」
「隠れんな!」
慌てて振り返ればまさに鬼のような形相の神田に、条件反射でアレンの背中に隠れてしまった。
だって怖い!
視線だけで殺されそうなんですけど!
「そんな顔してたら隠れたくもなるでしょ。目、完全に据わってますよ」
呆れた顔で言うアレンは平気なのか、私の盾になったまま動かずにいてくれた。
流石女性の味方と定評あるアレン…!
そういう優しさ、大切だと思う!
そう感謝の意を込めて見れば、ちらりと振り返った銀灰色の目と合う。
「ありがとうございます」
唐突に向けられたのは、私と同じ感謝の意。
「少し、考え込み過ぎてました」
それは今日何度も見た、笑いたくもないのに笑ってる顔じゃなかった。
よく見る紳士的な笑みとも違う、少し砕けた僅かな笑み。