My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に.
「神田だってちゃんと笑う時あるから──」
言いかけて、思い出す。
あの花畑で、私を見て可笑しそうに笑っていた神田の顔。
「気持ち悪く、ないと…思う…」
思わず言葉に詰まりそうになった。
……あ、駄目だ。
あの花畑の時みたいに、顔がまた赤くなってしまうかもしれない。
「雪さん?……なんか顔赤いですけど」
「な、なんでもない、なんでも」
慌てて俯いて顔を隠す。
そんな見てわかる程、赤いのかな。
恥ずかしい。
「……」
「…なんでもないから」
じーっと無言で見てくるアレンの視線を感じるから、俯いた顔を上げられない。
そんなに見ないで、恥ずかしいから。
「…それ、本当に笑ってたんですか? 狂気染みた笑顔じゃなくて?」
「オイ」
その視線を感じたまま、アレンの口から漏れた声はどことなく不満そうなもの。
そんなアレンに神田の低いツッコミが入る。
「だって普通に笑う神田とか、見たことないですし」
やっとその視線が外れた気がして、伺うように見れば。額に青筋浮かべた神田に向けて、淡々と言い切るアレンが見えた。
なんだろう。
これまでも二人が任務を組んだことはある。
その任務に私も同行したことはある。
でもここまで喧嘩三昧だったかな。
「笑えるなら僕にも見せて下さいよ。はい、スマイ」
「誰がやるかッ!!」
ほらほらと催促するアレンに、とうとう神田が怒鳴り声を上げた。
「大体テメェも、いつまで其処に隠れてんだよ!」
「ぅわ…ッ」
怒りの矛先は私にも向いて、伸びた神田の手が襟首を掴む。
そのまま前のめりに、神田の方へと強く引っ張られた。
「こら、暴力禁止!」
だけど体は神田にぶつかる前に、後ろから伸びた手によって止められた。
襟首を掴む神田のその手首を、強く握って止めているのはアレン。
「神田がそうやって乱暴にするから、雪さんも隠れたくなるんですよ。自業自得ですね」
「勝手にこいつの気持ちを代弁するんじゃねぇよ。虫唾が走る」
至近距離で睨み合う、二つの目。
バチバチと見えない火花が、間で散る。
ああ、結局こうなるんですね。
……私もう逃げてもいいかな。