My important place【D.Gray-man】
第18章 ロザリオを胸に
「任務中に余所見してんなよ」
少し先を歩くアレンの背中を見て、つい溜息。
すると隣にいた神田が、視線は前に向けたまま投げかけてくる。
余所見って…余計なこと考えてたのバレたのかな。
「…バレた?」
「わかり易いんだよ、お前」
思わず見上げた顔は、変わらず辺りを伺うように見渡してこちらを向いてはいない。
「他人を気に掛ける暇があるなら、自分の心配でもしろ」
なのにドキリとした。
最近気になっていた、自分の体の異変。
それを見透かされたのかと思って。
「此処でAKUMAが出たら一番に殺られんのはお前だぞ」
「あ、そっち?」
「それ以外に何があるってんだよ」
「いや…うん。そうだね。確かに」
だから拍子抜けた指摘に、思わず安心してしまった。
よかった、この額の十字傷の異変はバレてないみたいだ。
…別にバレてもいいんだけど…神田には一度見せているし。
ただ少し、治りが遅いだけで。
ただ少し、変な形をしてるだけで。
ただ少し…なんでできたのか、原因不明の傷なだけで。
「……」
ただ少し。
そんな小さな不安が積りに積もって、私は未だに婦長さんの所へ額の傷を診せに行けずにいた。
もしかして。
そんな嫌な予感が、完全には拭い去れなかったから。